研究課題/領域番号 |
23750037
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
田山 英治 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90372474)
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キーワード | 不斉包接 / 転位反応 / 四級アンモニウム塩 / アミノ酸 |
研究概要 |
カリックスアレーン骨格を基盤とする光学活性大環状化合物、すなわち光学活性カリックスアレーンを合成し、これを有機触媒として用いた四級アンモニウム塩の触媒的不斉転位反応を行うことで、光学活性非天然型アミノ酸の新規合成法の開発を試みた。基質となるアミノ酸エステル由来四級アンモニウム塩に光学活性カリックスアレーンを加えて包接させ、四級アンモニウム塩の周辺に不斉場を構築する。塩基を加えることでアンモニウムイリドを発生し、包接により構築された不斉場を利用して触媒的不斉転位反応の実現を目指す。 過去の文献を参考にカリックス[4]アレーンを調製し、光学活性ビナフチル基を導入するための手がかりとしてジブロモカリックス[4]アレーンを合成した。続いてボロン酸基を有する光学活性ビナフトール誘導体を調製し、鈴木-宮浦カップリング反応により2つの光学活性ビナフチル基を導入した光学活性カリックス[4]アレーンの合成に成功した。 得られた光学活性カリックス[4]アレーンを用いた触媒的不斉反応の検討と共に、四級アンモニウム塩を不斉認識しているか確認するため、NMR実験を行った。ゲスト分子として各種の四級アンモニウム塩を加えたところ、包接による化学シフト値の移動が見られた。更にN-アルキルピリジニウム塩を用いたところ、メチレンプロトンを不斉識別している実験結果が得られ、合成した光学活性カリックス[4]アレーンにより不斉場が構築されていることがわかった。 以上の知見を活かし、四級アンモニウム塩の触媒的不斉転位反応を試みたが、満足できるエナンチオ選択性の獲得には至っていない。基質と触媒が有する官能基とその分子構造について、更なる最適化が必要である。 一方、四級アンモニウム塩の触媒的不斉転位が実現したならば、生成物に残る窒素上置換基を容易に取り外せることが望ましい。この要望を満たす新たな手法の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、平成24年度の主たる目的は、光学活性カリックス[4]アレーンを用いた触媒的不斉転位反応を行い、光学選択性の向上を目的とした実験を行う予定であった。研究実績の概要にあるように、光学活性カリックス[4]アレーンの合成法はほぼ確立したものの、それを有機触媒として用いた転位反応において生成物を満足できる光学純度で得ることはできなかった。この点については更なる検討が必要不可欠であり、達成度はやや遅れている。 一方、合成した光学活性カリックス[4]アレーンによる不斉場構築が成功していることが実験的に証明できた。各種の四級アンモニウム塩をゲスト分子として用いたところ、包接による化学シフト値の移動が見られ、かつ不斉認識をしていることがNMR実験により確認できた。この結果は光学活性カリックス[4]アレーンを用いた触媒的不斉転位の実現に向け、意味ある実験結果になることが予想される。 やや本筋から離れるが、四級アンモニウム塩の触媒的不斉転位が実現したならば、生成物に残る窒素上置換基を容易に取り外す手法の開発が必要となる。この要求を満たす新規手法の開発に成功した。 以上より、研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23~24年度に合成した光学活性カリックス[4]アレーンを用いた不斉転位反応の結果を踏まえ、更なるエナンチオ選択性の向上を目的とした新規光学活性カリックス[4]アレーンのデザイン検討と合成を行う。得られた光学活性カリックス[4]アレーンを有機触媒として用い、アミノ酸由来四級アンモニウム塩の触媒的不斉転位反応、具体的にはSommelet-Hauser転位やStevens転位を試みる。一方、不斉識別分子としての機能発現についても検討する。各種の四級アンモニウム塩をゲスト分子として用い、包接による化学シフト値の移動やラセミ体分子の不斉識別能について、NMR実験により確認する。 基質として使用するアミノ酸由来の四級アンモニウム塩は若干分子サイズが大きいことを考慮し、より大きなボウル状分子となるキラルカリックス[6]アレーン、あるいはキラルカリックス[8]アレーンのデザインと合成も試みる。如何なる構造を有する光学活性カリックスアレーンが、アミノ酸由来四級アンモニウム塩の不斉転位反応に有効であるか明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では平成23年度にリサイクル分取HPLC装置を導入することで、目的とするキラルカリックス[n]アレーンを効率良く精製し、純度良く得ることを計画していた。しかし本研究を開始後、研究代表者の協力研究者が前述の装置を導入した。研究代表者はその装置の使用許可を得ることができたため当該装置の導入を見送り、研究推進に必要な他の物品の導入を優先した。結果的に導入しなかったリサイクル分取HPLC装置は高額であることもあり、他の物品を導入しても次年度以降に持ち越す研究費が生じることになった。 平成25年度は、申請計画で計上していた消耗品費(合成用試薬、溶媒、精製用シリカゲルなど)額に対し、交付予定額(平成25年度分)が少ないため、この差を埋める研究費として使用する。
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