研究課題
一重項ビラジカル性を有する化合物は結合が中程度に解離した電子構造を有しており、閉殻化合物にはみられない特異な物性の発現が期待されている。本研究においては、新奇なπ共役系化合物であるインデノフルオレンについて電気化学特性、光学特性を明らかにすることを目的に研究を行った。m-キノジメタン構造を有するインデノ[2,1-b]フルオレンの研究を行い、π電子が 20 個しかないにも関わらず、吸収端が 2000 nm に及ぶことを明らかにした。各種の測定からこの吸収は熱励起三重項種や不純物の吸収ではなく、化合物の一重項基底状態に起因する吸収であることを示した。長波長領域の吸収の原因を明らかにするために量子化学計算を行い、中程度の一重項ビラジカル性、非交互炭化水素系、小さなπ共役が長波長領域の吸収に重要であることを明らかにした。一般的に同じ系列のπ共役化合物では、π共役が大きいほど吸収は長波長シフトすることが知られているが、量子化学計算からインデノ[2,1-b]フルオレン類はπ共役が小さいほど吸収が長波長シフトすることが予想された。大きなπ共役化合物は合成の難しさ、溶解性の低さが問題になることが多いので、π共役を小さくするという設計指針は、今後のπ共役化合物の分子設計に大きな影響を及ぼすと期待される。一重項テトララジカル性の発現を目指して研究を行った、インデノフルオレン構造を有するシクロブタジエンモデルの新奇π共役分子は、X線構造解析の結果、結合交替を有していることが明らかになった。しかし、シクロブタジエンよりもπ結合が弱いことから、外部からのわずかな刺激によって結合交替のない構造に変化する可能性があると考えられる。今後、各種測定、量子化学計算を行うことで基底状態の詳細な電子構造、特に一重項ビラジカル性、テトララジカル性について明らかにする予定である。
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