研究概要 |
ヘキサチオペンタセンは、無置換のペンタセンとは異なり安定な化合物であり、半導体特性を有することから、有機トランジスタとしての応用も検討されている。しかし、一般的な有機溶媒に対して溶解性が低く、溶液中のスペクトルデータは収集されておらず、性質の検討が為されているとは言い難い。本研究では,ヘキサチオペンタセンにデンドロン型置換基を導入し、溶解性の向上を達成した。1,2,4-トリクロロベンゼン中、ペンタセンデンドリマーに過剰量の単体硫黄を作用させ、38時間加熱したところ、ヘキサチオペンタセンデンドリマーを合成することに成功した。1H, 13C NMR, DEPT, HMBC, MALDI-TOF MS, Vis-NIRスペクトル、および元素分析により、ヘキサチオペンタセンデンドリマーの構造を決定した。興味深いことに、今回得られたヘキサチオペンタセンは、これまでの報告と異なる付加位置の1,6,7,8,13,14位付加体が得られた。得られたヘキサチオペンタセンデンドリマーは緑色の化合物であり、可視領域に幅広い吸収を持つことが示された。 酸素雰囲気下、α-テルピネンのトルエン溶液に1mol%のヘキサチオペンタセンデンドリマーを加え、80分間、高圧水銀灯照射を行ったところ、対応する一重項酸素付加体であるascaridolを97%の高収率で得た。同様に、酸素雰囲気下、1-ナフトールのトルエン溶液に1mol%の5bを加え、80分間、高圧水銀灯照射を行ったところ、1,4-naphthoquioneをconversion 52%, 収率100%で得た。また、ヘキサチオペンタセンデンドリマーを加えない場合、ascaridolや1,4-naphthoquioneは得られなかった。この結果は、一重項酸素増感剤としてヘキサチアペンタセンが働くことを示した初めての例である。
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