研究概要 |
本課題では層状構造をもち、組成の自由度が極めて高いメリライト関連化合物A2MM'2X7(A =アルカリ土類金属等、M, M' = 遷移金属等、X = O, S)に注目し、新規物質の開拓を試みるとともに、遷移金属のスピン挙動を系統的に理解することを目的とした研究を実施し以下の成果を得た:【二次元反強磁性体Sr2MGe2O7 (M = Mn, Co)の磁気構造解析】 メリライト型酸化物Sr2MGe2O7の磁化率および比熱測定を行い、それぞれ4.5 K, 6.5 Kで反強磁性転移を起こすこと見出した。その磁気的挙動の詳細を明らかにするため、粉末中性子散乱実験を行った。観測された磁気ブラック反射から磁気構造を決定することに成功した。両化合物とも秩序化した磁気モーメントはコリニア配列をとるが、磁性イオンの異方性を反映した配列の違いを示すことを見出した。【アニオン置換型メリライトの新規合成と磁気的性質】 Mサイトに磁性イオンをもつSr2MGe2S6O (M = Mn, Fe)、およびM, A両サイトに磁性イオンを含むEu2MGe2S6O(M = Mn, Fe)の新規合成に成功した。いずれも正方晶メリライト型構造をとり、アニオンが秩序化配列していることが明らかとなった。Sr2MnGe2S6Oの磁化率測定の結果、有効磁気モーメントからMn2+イオンがS=5/2の高スピン状態にあり、Mnの反強磁性転移を示すことが明らかとなり、また、比熱では長距離秩序化を示すλ型の二次相転移による異常が観測された。一方、Eu2MnGe2S6Oは、磁化率が2.3 Kで異常を示すのに対して、比熱は15.0 Kでも異常を示し、EuとMnの段階的な磁気秩序を示す事を見出した。この結果は、同型の酸化物とは異なる磁気的相互作用の存在を示唆しており、複合アニオン化による磁性の制御へと繋がる大きな成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで明らかになっていなかったメリライト酸化物 Sr2MGe2O7 (M = Mn, Co)の磁気的性質の詳細を明らかにすることに成功した。(T. Endo et al., Inorg. Chem., 51, 3572-3578 (2012)) この化合物の磁気的性質は、本研究課題にて取り扱う物質の性質を理解するための基礎となる知見であり、大きな一歩となる成果として位置づけられる。 さらに、メリライト化合物の物性を大きく変化させるために複数のアニオンを持つ化合物の新規合成を試み、酸化物と同構造を持つオキシ硫化物の合成に成功した。その磁気的性質は従来の酸化物よりも転移温度が高く、また、ランタノイドの4f電子と遷移金属のd電子との磁気相互作用も大きく変化することが明らかとなり、このアニオン置換のアプローチがメリライト化合物の物性制御に極めて有効であることを示し、今後の研究展開に繋がる重要な成果を得た。
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