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2012 年度 実施状況報告書

メリライト型化合物を中心とした新規低次元物質の合成と物性解明

研究課題

研究課題/領域番号 23750052
研究機関北海道大学

研究代表者

土井 貴弘  北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20359483)

キーワードメリライト / 複合アニオン化合物 / 低次元磁性 / 磁気秩序 / d-f電子間磁気相互作用 / 磁気フラストレーション / マルチフェロイック / 光学的性質
研究概要

本課題では層状構造を持ち、組成の自由度の極めて高いメリライト A2MM'2X7(A = アルカリ土類金属, Eu; M,M' = 遷移金属, Si, Ge; X = O, S)を中心として、関連する低次元構造を持つ新物質の探索を行った。また、磁性を中心とした物性評価を行い、この化合物群の物性を系統的に理解する事を目的とした研究を実施した。
【Eu2MSi2O7の光学的性質】前年度に磁性を明らかにした新物質Eu2MSi2O7に対し、分光学的実験を行った。紫外-可視光拡散反射スペクトルから、バンドギャップエネルギーを決定し、励起-発光スペクトルでは、470 nm(Mg)、462, 630 nm(Mn)にピークを観測した。第一原理計算と実験結果との比較検討より、観測された挙動について理論的な観点からも明らかにした。
【PbMn2Ni6Te3O18型化合物の磁気的性質】磁性イオン(M)の一次元鎖を持つPbMn2M6Te3O18の新規合成に成功し、その構造を明らかにした。また、磁化率測定の結果、低次元系特有なブロードな磁気異常を示すことを見出し、理論的な一次元交替差モデルにより説明できることを明らかにした。
【Ln2MGe4O12の構造と磁気的性質】ランタノイド(Ln)と遷移金属(M = Co, Fe)の二次元ネットワーク構造を持つLn2MGe4O12の新規合成に成功した。詳細な結晶構造解析の結果、LnとMイオンがランダム占有する(Ln,M)O6八面体とLnO8正方逆プリズムから構成された二次元層を持つ事を明らかにした。さらに、磁気測定を行い、Mイオンの反強磁性転移(M = Co)、MとLnイオンの二段階磁気転移などの特異な磁気的挙動を見出した。
【Ln3OsO7の磁気的性質】Osの一次元鎖構造を有するフルオライト関連化合物の磁気的・熱的性質を調べ、低温における異常な磁気的挙動を見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

メリライト型酸化物の磁気的性質に加えて、光学的性質や理論計算を合わせて行うことで、この化合物群の構造と物性への理解を大きく進めることができた。また、酸素から硫黄へのアニオン置換によるアプローチに関しては、これまでに得られているアニオン比S:O = 6:1に加えて、ほぼ完全に硫黄に置換した試料の合成に成功した。これらの置換により磁気転移温度が上昇し、磁気的相互作用を強める効果があることを発見した。
関連する低次元構造を持つ化合物の新規合成に数多く成功し、構造的・磁気的に特異な挙動を見出した。特に、一次元鎖構造を持つPbMn2Ni6Te3O18型化合物では、NiサイトだけではなくPb、Mn、Te各サイトに関しても化学的置換が可能であることを見出した。すでに報告されている同型物質は1個のみであるが、実際にはかなり大きな化合物群である事が明らかになった。すでに4f電子系のランタノイドの導入にも成功し、今後、大きく展開できる第一歩となる成果を得た。

今後の研究の推進方策

メリライト型化合物に加えて、PbMn2Ni6Te3O18型化合物をはじめとした低次元系化合物の新物質探索を継続して行うとともに、その物性の全容解明を目指して研究を展開する。特に、これまでのEu2MSi2X7に加えて、組成の大きく異なるメリライトでもアニオン置換を試み、Siサイトへ磁性イオンを導入することで磁気フラストレーションの効果を取り入れることで、更なる新奇物性の発見を目指す。また、57Fe、151Euメスバウア分光の温度依存性の測定を行い、各イオンの局所環境や磁気秩序の形成過程に関する知見を得ることで、観測された磁性の理解を深める。
また、(研究用原子炉の再稼働は現時点では確定的ではないが、)粉末中性子回折実験(JAEA HRPD, 東北大金研 HERMES)を行い、いくつかの特徴的な磁性を示した化合物に対して磁気構造を決定することで、寄与する磁気的相互作用の詳細や磁気転移のメカニズムを明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Magnetic properties and structural transitions of fluorite-related rare earth osmates Ln3OsO7 (Ln = Pr, Tb).2013

    • 著者名/発表者名
      Yukio Hinatsu and Yoshihiro Doi
    • 雑誌名

      Journal of Solid State Chemistry

      巻: 198 ページ: 176-183

    • DOI

      10.1016/j.jssc.2012.09.039

    • 査読あり
  • [学会発表] 新規メリライト型酸化物Eu2MSi2O7 (M=Mg, Mn)の結晶構造と光学的性質2013

    • 著者名/発表者名
      遠堂 敬史、土井 貴弘、分島 亮、日夏 幸雄、作田 絵里、喜多村 昇、手塚 慶太郎
    • 学会等名
      日本セラミックス協会2013年年会
    • 発表場所
      東京工業大学(東京都)
    • 年月日
      20130317-20130319
  • [学会発表] 希土類酸化物Ln2MGe4O12(Ln = ランタノイド; M = 遷移金属)の結晶構造と磁気的性質2012

    • 著者名/発表者名
      和泉 慎也、青柳 遊大、土井 貴弘、日夏 幸雄
    • 学会等名
      平成24年度 日本セラミックス協会 東北北海道支部研究発表会
    • 発表場所
      岩手大学(盛岡市)
    • 年月日
      20121108-20121109
  • [学会発表] PbMn2Ni6Te3O18型構造を持つ新規複合酸化物の合成と磁気的性質2012

    • 著者名/発表者名
      浅井 清嗣、土井 貴弘、日夏 幸雄
    • 学会等名
      日本セラミックス協会 第25回秋季シンポジウム
    • 発表場所
      名古屋大学(名古屋市)
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] Ln-M-Ge-O系複合酸化物(Ln = ランタノイド; M = 遷移金属)の新規合成と結晶構造、磁気的性質2012

    • 著者名/発表者名
      青柳 遊大、和泉 慎也、土井 貴弘、日夏 幸雄
    • 学会等名
      日本セラミックス協会 第25回秋季シンポジウム
    • 発表場所
      名古屋大学(名古屋市)
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] Ni一次元鎖を持つ新規希土類複合酸化物の合成と磁気的性質2012

    • 著者名/発表者名
      浅井 清嗣、土井 貴弘、日夏 幸雄
    • 学会等名
      第29回希土類討論会
    • 発表場所
      北海道大学(札幌市)
    • 年月日
      20120515-20120516
  • [学会発表] 新規オキシ硫化物メリライトA2MGe2X7(A = Sr, Eu; M = Mn, Fe; X = O, S)の合成、構造、磁気的性質2012

    • 著者名/発表者名
      遠堂 敬史、土井 貴弘、日夏 幸雄
    • 学会等名
      第29回希土類討論会
    • 発表場所
      北海道大学(札幌市)
    • 年月日
      20120515-20120516

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公開日: 2014-07-24  

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