研究概要 |
本研究は、自己組織化により形成される有機ピラー型かご状錯体の内部空間を多核錯体の集積場として活用することで、構成金属の数・位置が精密に制御された金属クラスターの合成を行った。多核錯体として平面状Au3核錯体を用い、金属を三角柱状に有限集積させたことにより発現する機能物性、特に、金属クラスターの単分子伝導度の解析に焦点を当てた。 平成23年度は、有機ピラー型かご状錯体の内部空間に、Au(I)3核錯体を1分子、2分子、3分子集積させたAuクラスター(Au3, Au6, Au9)を合成した。Auクラスターの単分子伝導度は、①測定対象分子を含む水中でAu STM tipとAu結晶を機械的に接触、②金属接合破断後に分子を架橋させて測定した。得られた伝導度の値は、芳香族有機分子(ピレンジオン)を有限集積した系と比較してもさらに高い値であった。また集積数の増加に対する伝導度の減少が小さくなり、長距離電子輸送能力が高くなった。 平成24年度は、金属が集積することにより、新たな伝導チャンネルがフェルミレベル近傍に形成されていることが理論計算により明らかになった。また、伝導度の温度依存を解析することにより、トンネル機構で電子輸送が行われていることが分かった。単分子伝導度測定と理論計算は共同研究にて行った。有機ピラー型かご状錯体の上下のパネルに3核錯体を導入して、(Au3)nがパネル上下を貫通したナノワイヤーを構築することも検討し、配位子合成までは達成した。 金属クラスターの単分子伝導度の結果は、日本化学会第92,93春季年会にて口頭発表を行った。また、ドイツ化学会誌Angewandte Chemieにて論文発表した。
|