研究課題/領域番号 |
23750061
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山田 泰之 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (10385552)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ポルフィリン / フタロシアニン / 金属錯体 / ロタキサン / プログラム構築 |
研究概要 |
我々は、単一分子デバイスや超分子触媒に利用可能な分子ワイヤーのプログラム構築を目指し、ロタキサン結合を介して、ポルフィリンやフタロシアニンの数や配列を精密にコントロールながら一次元にスタッキングさせた分子アレイの構築を行った。 4つの24-クラウン-8部位を有するフタロシアニン1と、4本のアルキルアンモニウム鎖を有するポルフィリン2とを溶液中1対1の当量比で混合した後、アルキル鎖末端のアジド基をかさ高いホスホルアミデート基へと誘導することで、4つのロタキサン構造によりリンクしたフタロシアニンとポルフィリンのロタキサン型スタッキングダイマー3を合成した。 3より誘導したCu (II) 二核錯体4にホスファゼン塩基を作用させたところ、アンモニウム基とリン酸アミド基が脱プロトン化した化合物5を与えた。EPR測定の結果、4は基底状態でS = 1/2(独立した二つのスピン)を示し、5はS = 0(反強磁性カップリング)を示した。よって、酸・塩基により4と5の間で可逆的に構造変化させることで、二つのCu (II) イオン間のスピン-スピン相互作用をスイッチできることが明らかになった。 我々はさらに、4つのクラウンエーテル部位を有するフタロシアニン1と4つのアルキル側鎖にアンモニウムイオンを2つずつ有するポルフィリン6とを混合した後、6のアルキル鎖末端のアジド基をホスホルアミデート基へと誘導することにより、4重ロタキサン型ポルフィリン―フタロシアニン1 : 2会合体7を29%の単離収率で得た。1H NMRスペクトルから、 7は全てのアルキル鎖が2つずつのクラウンエーテルを貫通した4回対称性の構造をもつことが明らかとなった。このように、ポルフィリンの側鎖に導入するアンモニウムイオンの数によって、超分子アレイ内に集積化するフタロシアニンの数をコントロールできることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請においては、23年度の研究計画として4重ロタキサン型分子アレイ構築法の確立と構築した分子アレイの基本的な物性の測定を掲げたが、我々はすでに4重ロタキサン型分子アレイの単離に成功するとともに、UV, NMR, ESRスペクトル測定および電気化学測定などを終えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の計画通り、以下の点について重点的に研究をすすめる。・スタッキング型アレイと架橋型アレイ中に、孤立スピンを持つ金属錯体をプログラム配列化して、その磁気特性の評価をおこなう。また、アレイのスピンクロスオーバー特性についての評価をおこなう。・Cr2+, Mn2+, Fe2+(3+), Co2+などの6配位型金属ポルフィリンや金属フタロシアニンを含むスタッキング型アレイにピラジンなどの架橋配位子を加えて金属イオン間を連結し、ディスクリートな架橋型アレイを構築し、その物性を評価する。・ナノアレイ中に異種の金属ポルフィリンをプログラム配列化し、ジスルフィド基を持つ金属ポルフィリンを利用して金表面に固定化する。固定化したナノアレイ一分子のSTS(走査トンネル分光)測定をおこなうことで、ナノアレイのコンダクタンスを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に実験に用いる試薬および溶媒の購入に用いる。
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