本研究では、単一分子デバイスや超分子触媒に利用可能な分子ワイヤーのプログラム構築を目指し、ロタキサン結合を介して、ポルフィリンやフタロシアニンの数や配列を精密にコントロールながら一次元にスタッキングさせた分子アレイを構築した。 4つの24-クラウン-8部位を有するフタロシアニンと、4本のアルキルアンモニウム鎖を有するポルフィリンとを溶液中1対1の当量比で混合した後、アルキル鎖末端のアジド基をかさ高いホスホルアミデート基へと誘導することで、4つのロタキサン構造により連結されたポルフィリンーフタロシアニンスタッキング型ヘテロダイマー 1を合成した。また、1より誘導したCu (II) 二核錯体2にホスファゼン塩基を作用させたところ、アンモニウム基とリン酸アミド基が脱プロトン化した化合物3を与えた。EPR測定の結果、2は基底状態でS = 1/2(独立した二つのスピン)を示し、3はS = 0(反強磁性カップリング)を示した。よって、酸・塩基により2と3の間で可逆的に構造変化させることで、二つのCu (II) イオン間のスピン-スピン相互作用をスイッチできることが明らかになった。 我々はさらに、4つのクラウンエーテル型フタロシアニンと4つのアルキル側鎖にアンモニウムイオンを2つずつ有するポルフィリンとを用いた4重ロタキサン形成反応により、ポルフィリン―フタロシアニン1 : 2会合体4を29%の単離収率で得た。この結果から、ポルフィリンの側鎖に導入するアンモニウムイオンの数をプログラムすれば、アレイ内に集積化するフタロシアニンの数をコントロールできることが分かった。 以上のように本研究では、ロタキサンという自由度の高い超分子を利用して、ポルフィリンとフタロシアニンからなるスタッキング型アレイのプログラム構築法を確立した。今後は、これらの分子アレイの機能化について検討していく予定である。
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