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2011 年度 実施状況報告書

酵素インスパイアードマンガン4核クラスター触媒表面の創製と選択酸化触媒機能創出

研究課題

研究課題/領域番号 23750068
研究機関分子科学研究所

研究代表者

邨次 智  分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (20545719)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードマンガン / クラスター / 酸化物表面 / 固定化 / 触媒 / シリカマトリックス / アルケン / 選択的エポキシ化
研究概要

生体内の光合成酵素のモデル錯体として合成されているマンガン(Mn)4核オキソクラスターを有用反応触媒へと変換するべく、Mn4核オキソクラスター、[Mn4O2(CH3COO)7(C10H8N2)2] ClO4 (A)のSiO2表面への含浸法による固定化(298 K)、続く真空加熱排気(373 K)により酸化物表面固定化Mnクラスター(B)、および(C)をそれぞれ調製した。固定化のプロセスでは、CH3COO配位子が酢酸として定量的、かつ段階的に脱離し、また、Mnクラスター骨格を保持したまま固定化されたことが配位子定量分析、FT-IR、及びMn K端EXAFSより分かった。また、(B)にテトラメトキシシランの真空加熱蒸着-加熱加水分解を行い、シリカ薄層マトリックスを積層したマトリックス保護Mnクラスター(D)を調製した。(B)は酸素/イソブチルアルデヒドを用いたトランススチルベンのエポキシ化反応において、高い活性と選択性で対応するトランススチルベンエポキシドを生成したが、固定化した錯体の約半分のMnが溶液中へ溶出する傾向が見られた。また、(C)においても約半分のMnの溶出が見られたことから、シリカ固定化―真空加熱排気操作のみでは安定な触媒とはならないことが分かった。これに対し、(D)は(B)と同様、トランススチルベンのエポキシ化反応に高い選択性を示したが、(B)と異なりMnの溶出が劇的に抑えられ、再利用実験でも転化率の低下が見られなかったことから、表面マトリックスにより固定化Mnクラスターの溶出が抑制され、触媒として高い安定性が発現することが分かった。さらに、(D)は種々の内部アルケン類のエポキシ化に高い選択性を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

シリカ表面固定化Mnクラスターは酸素/イソブチルアルデヒドを酸化剤としたトランススチルベンのエポキシ化反応に対し高い活性と選択性を有することが分かり、生体酵素反応に限らない触媒反応へと適用可能であることが分かった。さらに、シリカ薄層マトリックスでMnクラスターを保護することで、同反応に対し高い選択性を保持したまま、Mnの溶液中への溶出を劇的に抑えることに成功した。そこで、シリカ薄層マトリックス保護Mnクラスターの触媒反応特性、特に不均一系触媒としての有用性とエポキシ化反応におけるアルケン類の基質適用性について研究を進めた結果、安定な触媒として働くこと、及び種々の内部アルケン類に対しても高いエポキシド選択性を示すことを見出した。

今後の研究の推進方策

トランススチルベンのエポキシ化反応において、単純な固定化では固定したMnクラスターの溶出が顕著であった固定化Mnクラスターに対し、シリカ薄層マトリックスを積層したMuクラスターは、高い選択性を保持したまま、Mnの溶液中への溶出を劇的に抑えることに成功した。そこでまず、シリカ薄層マトリックス保護Mnクラスターの触媒反応特性について研究を展開したため、固定化Mnクラスターの触媒反応前後の詳細な構造解析について、平成23年度は行うことができなかった。平成24年度は、固定化Mnクラスターの表面構造解析、特にマトリックス保護Mnクラスターの触媒調製時、及び触媒反応前後の構造解析を進める。固定化Mnクラスターの配位子を鋳型分子とした表面モレキュラーインプリンティング触媒の設計に取り組む。安定な触媒効果を発現するシリカマトリックスで保護したモレキュラーインプリンティングMnクラスターにおいて、立体、位置選択的エポキシ化やアルコールの選択酸化反応、メタンや一酸化炭素からのメタノール合成等の高難度選択酸化反応などを検討する。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は、酸化物表面固定化Mnクラスターの触媒調製時、及び触媒反応前後の構造解析を行うために必要なIn-situ構造解析に必要なFT-IR、XAFSセルを設計、製作する。また、鋳型配位子、分子認識サイトなどを組み合わせた表面モレキュラーインプリンティング触媒の調製を行うためのガラス反応セルを設計、製作する。触媒反応は選択的エポキシ化のみならず、固定化Mnオキソクラスターを活用したアルコールの選択酸化反応、メタンや一酸化炭素からのメタノール合成等の高難度選択酸化反応など、多くの反応条件検討が可能な恒温反応槽、及び生成物の分析に用いるキャピラリーGCカラムを購入する。その他、クラスター合成、触媒調製、反応実験に必要な試薬類、高純度ガス、ガラス、一般実験器具を購入する。また、放射光施設使用料、及び学会における成果発表のための旅費が必要となる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 2011

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 表面マトリックスで保護された酸化物表面固定化Mnクラスターの調製とそのエポキシ化反応特性2012

    • 著者名/発表者名
      邨次 智・翁 志換・唯 美津木
    • 学会等名
      第92回日本化学会年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学(神奈川県)
    • 年月日
      2012年3月25日
  • [学会発表] 表面を媒体とした新しいMnクラスター選択酸化触媒の創出2011

    • 著者名/発表者名
      邨次 智・翁 志換・唯 美津木
    • 学会等名
      第61回錯体化学討論会
    • 発表場所
      岡山理科大学(岡山県)
    • 年月日
      2011年9月17日

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公開日: 2013-07-10  

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