研究課題/領域番号 |
23750072
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
羽場 宏光 独立行政法人理化学研究所, RI応用チーム, チームリーダー (60360624)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 超重元素 / 超アクチノイド元素 / 単一原子化学 / 相対論効果 / 気体充填型反跳核分離装置 / ガスジェット搬送装置 |
研究概要 |
本研究では,理化学研究所リニアック棟に既設の気体充填型反跳核分離装置(GARIS)にガスクロマトグラフ化学分析装置を結合することによって,新元素(超重元素,原子番号104以上)の気相系における化学的性質を調べるための新しい元素分析システムを開発する.この目的のため,平成23年度は,まずGARIS直結型ガスクロマトグラフ化学分析装置の製作を行った.直径100mmのGARIS焦点面に,真空窓となるマイラー箔(~0.5 μm)を取り付け,石英製の等温ガスクロマトグラフカラムを結合した.GARISとカラムの間には,約100kPaの差圧があるが,開口率84%のハニカムサポートグリッドを作製してマイラー箔を支持した.等温ガスクロマトグラフカラムは,石英で一体成型し,GARISとの接続部は,耐薬品性の高いダイフロンで製作した.本装置を用いれば,目的超重核を重イオンビームや副生成物から物理的に前段分離した後に化学分析でき,極低バックグラウンド下で放射線計測を行える.他核種からの妨害放射線の影響を考慮する必要がなく,これまで同定が困難であった自発核分裂によって壊変する超重核さえも研究の対象とできる.また,従来の手法では,塩化カリウムなどのエアロゾル物質を標的チェンバー内に導入し,反跳した超重核を錯形成部まで何メートルもガスジェット搬送する必要があった.このエアロゾル物質は化学分析時の不純物となり,錯形成やガスクロマトグラフ分離に深刻な障害となっていた.今回の新システムでは,ビームがGARISによって分離されるため,GARIS直後に錯形成部を配置でき,エアロゾル物質を全く使用せずに高効率かつ迅速に錯形成とクロマトグラフ分析を行うことができる.さらに,有機系の錯形成試薬もビームに破壊されることなく初めて使用可能となり,対象とできる超重元素化合物の種類を飛躍的に増大できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は,最重要課題であるGARIS直結型ガスクロマトグラフ化学分析装置の製作を予定通り行うことができた.しかしながら,理研RIビームファクトリー実験計画の予期せぬ変更や電力使用規制のため,重イオンリニアックを利用したガスクロマトグラフ装置の性能試験ならびに軽い同族元素の放射性同位体を用いた超重元素の化学実験系の探索を効率的に進めることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に製作したGARIS直結型ガスクロマトグラフ装置の性能試験を,104番元素ラザホージウム(Rf),105番元素ドブニウム(Db)ならびに106番元素シーボーギウム(Sg)の軽い同族元素の放射性同位体を用いて行う.さらに,248Cm,natGdならびにnatGeの混合標的を作製し,同一の重イオンビームで超重元素とその同族元素を同時に製造し,超重元素と全く同じ実験条件下で同族元素のガスクロマトグラフ分析を行う技術を開発する.この画期的な手法により実験条件の相違による系統誤差を完全に打ち消し,元素間の吸着挙動の違いを明確に観測することができる.最終的に,Rf,DbならびにSgの様々な揮発性化合物のカラム固定相に対する吸着エンタルピーを系統的に測定し,これらを軽い同族元素のデータや相対論的量子化学計算と比較することから,周期表の重い極限領域に位置する超重元素の電子状態と相対論効果が化学結合に与える影響を考察する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は,標的作成に使用する化学試薬,アルファ線検出器(シリコンPINフォトダイオード検出器),GARIS焦点面に設置するマイラー箔,真空配管部品,錯形成化学試薬,ヘリウムガスジェットガスなどの消耗品に使用する予定である.
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