研究課題/領域番号 |
23750072
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
羽場 宏光 独立行政法人理化学研究所, RI応用チーム, チームリーダー (60360624)
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キーワード | 超重元素 / 気体充填型反跳核分離装置 / ガスクロマトグラフ装置 |
研究概要 |
本研究では,理研気体充填型反跳核分離装置(GARIS)にガスクロマトグラフ化学分析装置を結合することによって,超重元素(原子番号104以上)の気相系における化学的性質を調べるための新しい元素分析システムを開発する.平成24年度は,前年度に製作したGARIS直結型ガスクロマトグラフ化学分析装置において,GARISとガスクロマトグラフ部を隔てるマイラー真空窓(直径:100 mm;厚さ:0.5 μm)を支持するためのハニカムグリッドを改良し,超重元素RIの製造効率を増大させた.また,GARIS直結型ガスジェット搬送装置と回転式連続α線測定装置を用いて,105番元素ドブニウム(Db)ならびに106番元素シーボーギウム(Sg)の化学実験の対象とできる長寿命RIを,それぞれ248Cm(19F,5n)262Db,248Cm(22Ne,5n)265Sg反応によって合成し,生成率と壊変特性を調べた.さらに,超重元素のカルボニル錯体の合成とその気相化学分離を目指し,AVFサイクロトロン施設に開発した一酸化炭素ガスジェットを用いて,Zr-89m,Mo-93m,Tc-92,W-179などのRIを製造し,カルボニル錯体の合成試験を行った. GARIS直結型ガスクロマトグラフ化学分析装置を用いれば,目的超重核を重イオンビームや副核反応生成物から質量分離した後に化学分析でき,極低バックグラウンド下で放射線計測を行える.本装置では,ビームがGARISによって分離されるため,GARIS直後に錯形成部を配置でき,エアロゾル物質を全く使用せずに高効率かつ迅速に錯形成とクロマトグラフ分析を行うことができる.有機系の錯形成試薬もビームに破壊されることなく初めて使用可能となり,対象とできる超重元素化合物の種類を飛躍的に増大できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度までに,GARIS直結型ガスクロマトグラフ化学分析装置の開発,超重元素とその軽い同族元素の同位体合成を予定通り行うことができた.しかしながら,理研RIビームファクトリー実験計画の予期せぬ変更や電力使用規制のため,重イオンリニアックを利用したガスクロマトグラフ装置の性能試験ならびに軽い同族元素のRIを用いた超重元素の化学実験系の探索を効率的に進めることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,GARIS直結型ガスクロマトグラフ装置の性能試験を,104番元素ラザホージウム(Rf), 104番元素ドブニウム(Db)ならびに106番元素シーボーギウム(Sg)の軽い同族元素のRIを用いて行う.平成24年度に継続して,Cm-248,Gd-nat(nat:天然同位体組成)ならびにGe-natの混合標的を作製し,同一の重イオンビームで超重元素とその同族元素を同時に製造し,超重元素と全く同じ実験条件下で同族元素のガスクロマトグラフ分析を行う技術を開発する.この画期的な手法により実験条件の相違による系統誤差を完全に打ち消し,元素間の化学挙動の違いを明確に観測することができる.さらに,Rf,Db,Sgを対象とした気相化学実験に向け,それら元素の軽い同族元素のRIを用いて化学反応系の探索を行う.最終的には,本研究で開発したGARIS直結型ガスクロマトグラフ装置を利用し,超重元素の揮発性化合物を合成し,カラム固定相に対する吸着エンタルピーを系統的に測定し,これらを軽い同族元素のデータや相対論的量子化学計算と比較することから,周期表の重い極限領域に位置する超重元素の電子状態と相対論効果が化学結合に与える影響を考察する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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