平成25年度(最終年度)は、酵素前駆体を分子認識素子として用いるエンドトキシンの実用的な検出法について、高感度化のための検出法の開発とチップ型デバイスの開発に取り組んだ。さらに、本手法をエンドトキシン検出だけではなく広く一般展開するために、細胞のアポトーシス検出への応用について検討した。 実用的なエンドトキシン検出の高感度化のために、平成23年度に成功した変換ストリッピング法を用いる方法について、液絡を排して簡易なデバイス構造とするための研究を行った。液絡によるイオン移動の代わりに、両セル内に配した電極上での電気化学反応によって各セルの電気的中性を保つことが可能であると考え、原理検証を行いこれに成功した。また、チップ型デバイスを作製し、エンドトキシンが検出できることを示した。これにより、エンドトキシンをモデル検出物質とした酵素前駆体を用いる電気化学センシング手法について、原理的にもセンサ工学的にもこれまでにない方法で、実用的かつ高感度な手法を提供できることが示された。3年間の成果に基づくエンドトキシン検出装置の実用化を2年後の上市を目指して企業とともに進めている。 酵素前駆体や受容体を用いる電気化学センシング手法の一般展開に関する研究について、一般的に用いられる発色基質Asp-Glu-Val-Asp-p-nitroaniline (DEVD-pNA) および新規に合成した電気化学用の基質Asp-Glu-Val-Asp-p-methoxyaniline (DEVD-pMA) を用いて、カスパーゼ-3活性の検出に基づく細胞のアポトーシス検出に成功した。これにより、エンドトキシンだけでなく、一般的なプロテアーゼ検出にも開発した手法を応用することが可能であることが示され、本研究が新しい原理に基づく電気化学センサの発展につながることが期待できる。
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