研究課題/領域番号 |
23750075
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
高貝 慶隆 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (70399773)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 分析化学 |
研究概要 |
本年度は,セルラーゼの定量分析システムの構築をおこなった。セルラーゼ水溶液に銅フタロシアニン結合セルロースを添加すると,水溶液中に銅元素を含む化学種がppbレベルの濃度で放出されることを明らかにした。この現象を利用して,セルラーゼの定量法として確立できることを明らかにした。この系は,銅フタロシアニン結合セルロースの量に依存して,銅元素を定量的に放出した。その傾向は,一般的な酵素反応における反応生成物の増加曲線の挙動と一致することを明らかにした。翌年度は,この知見をさらに検討して,セルラーゼによる分解メカニズムを明らかにする。反応停止させる手法として,試料溶液から銅フタロシアニン結合セルロースを抜き取ることで,酵素反応が停止することを見出した。この知見を活用することで効率的な分析システム設計を行った。酵素分析法は,一般的に測定誤差が大きいので,その測定誤差の抑制が不可欠である。ICP分析では一般的にY(イットリウム)などを内標準物質として添加するが,本研究では標準溶液とサンプル溶液でマトリックスが異なり発光強度に差が生じる懸念と,Yは強酸性溶液で溶液調製している為,酵素反応を阻害する懸念があった。そこで本研究ではオンライン内標準添加システムを採用して,セルラーゼ分解反応に適した測定を構築することができた。最終的に,5~1000mg/lレベルのセルラーゼ濃度の定量を行うことができた。本法は,ICP-MS分析やフレームレス原子吸光光度計(FL-AAS)に応用できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セルラーゼ分析法の構築に関しては,当初の計画以上に進んでいる。その一方で,金属錯体結合セルロースの合成は,セルロースと色素をつなぐ連結部の合成が難航しており,若干の遅れが見受けられる。しかしながら,H24度に計画している分解物の同定実験もすでに進めており,全体的にはおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,当初の計画通り,酵素反応の代謝物を明らかにし,セルラーゼを用いた酵素活性測定と既存法との相関性を明らかにする。同時に,遅れている金属錯体結合型セルロースの合成にも別のアプローチを持って取り組みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究実施計画に基づいて研究費を使用するが,合成研究などで若干の合成アプローチを変えて実験を進めるために設備費の部分で変更が出るかもしれない。
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