研究課題/領域番号 |
23750078
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
豊田 太郎 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80422377)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 組織マーカー / ジャイアントベシクル / インドシアニングリーン / X線造影剤 |
研究概要 |
【研究成果の内容】消化管に発生する早期癌は,手術時に臓器外部から位置を特定することが困難である.したがって早期癌の過大な切除が行われ,術後に患者の生活能力(QOL)の低下をきたすことがある.本研究では,生体組織透過性の高い近赤外線領域とX線領域の電磁波を利用し,内視鏡・X線撮影・視認の複数のモダリティで病巣の位置を統合的に把握し,術前シミュレーション・術中ナビゲーションを可能にする基盤技術の開発を目指す.このため,近赤外蛍光色素とX線造影剤をともに組み込んだ低拡散性・低侵襲性の脂質複合型マーカーの創成を本研究の目的としている.平成23年度では,市販の脂溶性のX線造影剤および近赤外蛍光色素を組み込んだジャイアントベシクル凝集体である組織マーカーを合成し,それをブタ胃切片に導入し,近赤外蛍光用腹腔鏡カメラとX線CTによって画像評価したところ,300uLの導入量で直径1cm程度のスポットとなる組成比を見出すことができた.【研究成果の意義・重要性】成人のヒトの胃壁へ本組織マーカーに導入する場合、にじみをふくめ5mm程度となることが必要であり、本研究で見いだされた組成比は、この要請を満たす兆しがあるものと言えよう.術前・術中を通して統一した基準による病巣の位置把握を可能にする"生涯を楽しむための医療基盤技術"に貢献するため、来年度は麻酔下のブタの胃を用いて、5mm程度のにじみに抑えるマーカーの組成比を見出す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,近赤外蛍光色素とX線造影剤をともに組み込んだ低拡散性・低侵襲性の脂質複合型マーカーの創成を目的としている.すでに,市販の脂溶性のX線造影剤および近赤外蛍光色素を組み込んだジャイアントベシクル凝集体である組織マーカーを合成し,それをブタ胃切片に導入し,近赤外蛍光用腹腔鏡カメラとX線CTによって画像評価できる実験プロトコルを確立できたことは,研究計画を遂行できた証拠である.
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今後の研究の推進方策 |
近赤外蛍光色素であるインドシアニングリーンや、脂溶性X線造影剤であるリピオドールは,すでに臨床で用いられている化合物であり安全面で課題はほぼないものの,水に分散させて利用する方法のみが認められているため,本研究の目指す腹腔手術ナビゲーション法で,これら化合物がジャイアントベシクル凝集体に組み込まれた状態で充分な機能(コントラスト)を有するには改善の余地が残されている.そこで脂溶性X線造影剤においても,C=C結合を多くもつ大豆レシチンをヨード化し,ヨウ素価を高めたリン脂質を新たに有機合成し,ジャイアントベシクル凝集体のCT値を向上させ,CT値のダイナミックレンジの最大値(500)を目指す.そして,これら新規化合物を組み込んだジャイアントベシクル凝集体について,近赤外蛍光カメラおよびX線CTで画像評価するのみならず,ラットによる短期毒性評価を外部委託し,本研究の組織マーカーの有用性を実証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
新規リン脂質を有機合成するために,人工の両親媒性分子の有機合成を専門とする研究員に専門的研究指導をあおぐ謝金を支払う予定である.また毒性評価に関して,外部委託することを計画している.その他,有機合成試薬や観測に必要な材料を消耗品として購入する.必要に応じて,共同研究者との打ち合わせのための国内出張に旅費をあてる.
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