電界効果トランジスタ(FET: Field-Effect Transistor)の原理によるラベルフリーで高感度な電気計測技術を応用して、核酸アプタマーを用いた高感度電位計測バイオセンサーによるバイオマーカー検出に関する研究をおこなった。実施計画に基づき、昨年度までは核酸アプタマーの分子設計および電極表面への核酸アプタマープローブの固定化方法・固定化密度を検討した。本年度は、新たな自己組織化単分子膜(SAM)分子として、生体の細胞膜と類似の構造を有するバイオミメティック分子を設計し、広範囲なpH条件下で生体分子の電極表面に対する非特異的な吸着を抑制する界面を設計し、高感度な検出を実現する条件を見出した。 次に、マイクロアレイ電極に固定化した核酸アプタマーによるタンパク質の高感度電位計測バイオセンシングにおいて、トロンビン、リゾチーム、CRP、VEGFの4種類のモデルタンパク質の高感度検出を試みた。タンパク質は外部pHに応じて分子表面のnet電荷量を変化させることができることに着目し、測定溶液のpHやイオン組成の最適化を行い、シグナルの高感度化をおこなったが、実サンプル測定に必要な感度は得られなかった。そこで、当初予定していた臨床サンプルを用いた研究をおこなうことをやめ、再びシグナルの高感度化を得られる界面設計に立ち返った。現在、複数のアプタマーを用いて、固定化方法や密度を検討することによりシグナルの高感度に取り組んでいる。 デバイスの集積化を行い、スクリーンプリント法によって作製されたアレイ化金電極を用いて高スループットスクリーニングのモデル系として10チャンネル同時測定を実現し、測定精度および再現性の向上を達成した。
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