研究課題/領域番号 |
23750081
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小松 広和 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (10407140)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 分子プローブ / 蛍光 / 燐光 / イメージング / 低酸素 / がん / レシオ測定 / ルテニウム錯体 |
研究概要 |
がんの次世代検出法としては、従来のがんの形態的情報の画像化を超えた、病態情報の一つである低酸素状態のイメージング法の開発が急務である。しかしながら、従来法の低酸素プローブでは可逆性がなく、イメージングにおける定量性・リアルタイム性に問題があった。そこで、光学的方法もしくはNMR/MRI法において定量的・可逆的な酸素応答を得ることを目指したレシオメトリックプローブの開発及びその細胞・生体イメージングへの応用実験を計画した。一年目では、まず初めにポルフィリン骨格を有する酸素プローブの開発を行った。ポルフィリン誘導体を合成し、モリブデンと配位させることでプローブモデル錯体P-Moを開発した。P-Moは、低酸素下において、NMR上で芳香族の1Hのシフト、および光学的特性ではSoret帯の吸収の長波長化とQバンドの吸収の変化、および600nm前後の蛍光の増大を示した。また、その応答に可逆性が見られた。しかしながら、開発したモデルプローブP-Moは光を当てると酸素錯形成が変化する挙動を示したことから、生体イメージング用のプローブとしては十分ではないと考えた。そこで研究計画を進展させ、可逆的な酸素応答を示すルテニウム錯体を用いた燐光プローブを開発することにした。初めにモデル錯体の開発を行った。ルテニウム錯体Ru-Phenは水系でバイオイメージングに適する600nm付近に燐光を示し、その燐光は酸素に可逆的に光学応答することがわかった。また、Ru-Phen誘導体を数種合成し、置換基効果を検討した。可逆的・リアルタイム性を有する光学イメージングプローブの開発に成功したことから、このレシオメトリック応答への改良および生体応用への進展によって、低酸素状態の定量的なイメージングを実現可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ポルフィリン錯体P-Moにおける低酸素プローブの基礎物性評価が終了し、低酸素プローブとして可能な特性を有していることが確かめられた。さらに研究を進め、新たにルテニウム錯体において低酸素検出可能な燐光プローブの開発に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、定量的なイメージングを可能にするためのレシオメトリック光学プローブの開発へと進展する。そのために、蛍光色素―ルテニウム錯体複合体を開発する。また細胞実験へと展開し、脂溶性のコントロールによるプローブの細胞動態制御を行う。さらには、細胞実験に加えて、動物実験として担がんマウスを用いたin vivoイメージングへの展開を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
新規プローブの開発のために有機合成用の試薬、溶媒、ガラス器具類が必要である。また、細胞でのプローブ実験のために細胞培養のための試薬、器具、細胞の費用の必要である。さらに、in vivo(マウス)でのイメージング実験のために実験動物および試薬、器具の費用が必要である。
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