重合開始剤を備えたシリコン量子ドットをヒドロシリル化反応を用いて新規に合成し、さらに親水性モノマー(オリゴエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート)を加えて原子移動ラジカル重合を行なうことで、粒子表面を親水性高分子で被覆した。得られた親水性高分子被覆シリコン量子ドットは良好な水分散性と青色発光を示し、蛍光量子収率は被覆前と比較して約6倍向上した。これは、量子ドットの粒子表面が高分子によって被覆されることで、水分子との接触が抑制されることにより、熱的なエネルギー失活が効果的に阻害されたためと考えられる。本研究では、細胞イメージングへの応用を目指しているために、量子ドットの塩濃度依存性や pH 依存性について調査した。結果として、生体内環境と同濃度(0.15 M)の塩化ナトリウムを含む水溶液中や pH が 3-11 までの水溶液中では、高分子被覆シリコン量子ドットは安定して分散できることがわかった。以上の結果から、本研究で開発された蛍光材料は生体内環境下においても安定して使用できることが示唆された。さらに、高分子被覆シリコン量子ドットを用いてアフリカミドリザル腎臓由来細胞の蛍光イメージングについて検討した。細胞の存在する場所が選択的に量子ドットの発光色(青色)で染色されたことから、量子ドットは細胞に取り込まれ、細胞環境中においても十分に検知可能な青色蛍光を示すことがわかった。今後、量子ドットの表面をガン細胞に指向性がある化合物(葉酸など)で化学修飾することで、ガン細胞の選択的な蛍光イメージングを目指す。
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