研究課題/領域番号 |
23750092
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
巴山 忠 福岡大学, 薬学部, 助教 (90549693)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 分離指向性誘導体化 / 液体クロマトグラフィー / 質量分析計 / パーフルオロアルキル / フルオラス |
研究概要 |
本研究では、フルオラス(パーフルオロアルキル基同士の親和性)を利用して、LC-MS測定上の問題点(イオン化干渉)を解決し得る方法の開発を試みた。その原理は、測定対象物質にフルオラス基を導入した後、フルオラス基修飾LCカラムによって特異的かつ選択的に保持・ 分離を行うといったものである。本年度は、アミノ基含有化合物(生体関連アミン類)を対象に、フルオラスアルデヒド試薬を用いて誘導体化し、得られた誘導体のフルオラスLC分離を試みた。具体的には、還元的アミノ化反応によって、カテコールアミン類やインドールアミン類などのアミノ基をパーフルオロアルキル化した。当初、本反応では、対象となるアミノ基にフルオラス基が一つ導入されるものと考えていたが、一級アミノ基に対しては二つのフルオラス基を導入することが可能であった。そこで本年度は、一級モノアミン類に焦点を当て、それらの超選択的分析を試みた。フルオラスアルデヒド試薬にはperfluoroundecan-1-alを、還元剤には2-picoline boraneを用いて検討を行った結果、緩和な条件下(室温・15分)で反応を完結させることが可能であった。本法によって得られた誘導体は、フルオラスLCカラム上に極端に保持され、試料夾雑物と極めて良好に分離できることが確認された。とくに、LC-MS測定においてイオン化干渉の原因物質とされているリン脂質との分離は良好であり、回収率や精度・正確性などについても満足のいく結果が得られた。以上の結果より、本法がLC-MS測定においてイオン化干渉を受けない画期的な測定方法であることが証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載のとおり、まずは第一級アミン類を対象にして、フルオラスアルデヒド試薬を用いたフルオラス誘導体化法の開発に成功している。得られた誘導体は、フルオラスLCカラムに選択的に保持できることを確認し、本法の有用性も実証した。また、アミノ基以外の官能基(カルボキシル基やスルフヒドリル基)をもつ生体関連物質についての誘導体化法の開発に関しても現在進行中であり、予備実験の結果、本研究の目的は十分に達成可能であると考える。 以上のとおり、研究はおおむね順調に進行しており、次年度以降についてもとくに問題なく進行可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、対象物質を拡張し、本法の適用拡大を図る。具体的には計画書のとおり、カルボキシル基、スルフヒドリル基あるいは水酸基などを対象にしたフルオラス誘導体化法を確立し、広範の物質に対する有用性を確認する。以上の基礎的な検討を行って本法の基盤を整備した後は、実試料分析(例えば、メタボロミクス解析など)へ適用し、本法の更なる有用性を実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も本年度と同様、研究費は、薬品類(対象物の標準品やフルオラス試薬など)やLCMSの消耗部品あるいは溶媒などにその大半を使用する。その他として、学会や研究会参加のための旅費、論文投稿の際の英文校閲費や投稿料などに使用する予定である。研究費用お内訳に変動が生じた場合は、消耗品費で調整する。次年度の研究費においても90%を超える費用はない。
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