研究課題/領域番号 |
23750095
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
平野 悠 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (70415735)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 電気化学 / SECM / 細胞 / マイクロ電極 |
研究概要 |
生体より回収された植え継ぐ前の細胞(初代培養細胞)は生体臓器に近い機能を保持しているため薬剤活性の解析には必須である。例えば、心筋細胞ではその拍動パターン、脂肪細胞では脂肪の蓄積・消費に伴う形状変化が解析指標となる。しかしながら、細胞群を対象とした初代培養細胞の測定には定量性に課題があり、また形状が変化する細胞を連続して観察することは極めて困難であった。そこで、本研究では、細胞を非接触で観察可能な走査型電気化学顕微鏡(SECM)を利用し、心筋細胞や脂肪細胞などの初代培養細胞を一細胞レベルで長時間・連続して観察可能なシステムの開発を目指している。23年度は、SECMのプローブであるマイクロ電極の電流値が電極先端と対象との距離に依存することを利用して、心筋細胞の収縮、弛緩に伴う形状変化を電流応答として測定する心筋細胞評価システムを開発した。この測定には適切な電気学活性種(Med)を選択する必要があることから、はじめに、Medが心筋細胞に与える影響を評価し、測定に使用するMedの種類や濃度、印加電位を検討し、拍動を維持したまま電流応答が測定可能な溶液条件を決めた。次に、電流測定を伴うマイクロ電極の10 nmステップの垂直方向の走査(アプローチカーブ)を利用して、細胞上1-5 μmの位置に正確にマイクロ電極を配置する技術を開発した。さらに、細胞上に配置した電極の電流値を10 kHz以上のサンプリング間隔で測定することで、1秒間に1回以上のペースで拍動する心筋細胞の動きを定量し、心臓へ副作用を起こす薬剤を添加した時の拍動パターンの変化を解析することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度目標としていた、SECMを利用して心筋細胞の拍動パターンを電気化学的に評価するシステムを構築できたことから、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発したSECMシステムを利用して、心筋細胞を対象に一細胞レベルでの薬剤応答の解析を試みる。また、脂肪細胞を対象として脂肪球の蓄積・消費を観察可能なシステムへと発展させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は、細胞評価システムの制御・解析プログラムの開発、および測定条件を検討したことから細胞・試薬の購入が計画よりも少なくなった。24年度は細胞、試薬の使用量が大幅に増える予定であり、また、脂肪細胞評価へシステムを発展させるための改造費用などを見込んでいる。
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