生体より回収された植え継ぐ前の細胞(初代培養細胞)は生体臓器に近い機能を保持しているため薬剤活性の解析には必須である。例えば、心筋細胞ではその拍動パターン、脂肪細胞では脂肪の蓄積・消費に伴う形状変化が解析指標となる。しかしながら、細胞群を対象とした初代培養細胞の測定には定量性に課題があり、また形状が変化する細胞を連続して観察することは極めて困難であった。そこで、本研究では、生細胞を非接触で観察可能な走査型電気化学顕微鏡(SECM)を利用して初代培養細胞の評価システムを開発し、薬剤解析への応用を試みた。 【心筋細胞評価システムの開発】平成24年度は23年度に開発した心筋細胞の拍動解析システムの改良を行うことで、拍動する細胞の酸素消費を測定することが可能となった。さらに、測定データから拍動の動きを解析するためのソフトウェアを開発した。これにより、培養温度を2℃変えたときの拍動の動きおよび酸素消費量の変化を観察することができた。 薬剤の誘発する心室筋の活動電位持続時間(QT間隔)の延長は、最悪の場合、心停止を伴う重篤な副作用であり、一般的には心筋細胞の拍動時の細胞外部電位を測定することで評価されている。そこで、開発したシステムをQT延長アッセイへ適用し、心臓へ副作用を起こす薬剤(アステミゾール)を培地に添加した時の拍動パターンを観察した。その結果、薬剤添加により拍動の感覚が乱れる様子を観察することができた。 【脂肪細胞評価システムの開発】脂肪細胞は、脂肪の蓄積や消費の過程で細胞形状を変化させる。平成24年度は、心筋細胞評価システムを基にして、脂肪細胞を対象として脂肪球の体積を測定することが可能なシステムを構築した。
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