研究概要 |
遷移金属を用いた炭素―炭素形成反応を応用し、有機小分子作る方法を開発することは、有機合成化学の中心的な課題の一つである。我々の研究室では、4族金属においてシクロペンタジエニル配位子の炭素-炭素結合形成および切断反応が進行することを見出した。そこでこれらの新たな反応を有機合成に応用することを目的として研究に着手した。本研究では、シクロペンタジエニル基およびインデン基を有するチタンニウムとジルコニウム錯体において、種々の試薬を加えることによって、対応するインデン誘導体及びフルオレン誘導体の合成に成功した。ビス(シクロペンタジエニル)チタナシクロペンタジエン錯体に対し、アゾベンゼンおよび四塩化チタンを加えると、ジルコナサイクルのジエン部位とシクロペンタジエニル配位子とがカップリングし、対応するインデン誘導体が高収率で得られた。種々の置換基(alkyl, alkenyl, alkynel, aryl, etc.)を持つチタナシクロペンタジエン錯体においても対応するインデン誘導体が高収率で生成することが分かった。さらに、二つのアルキン試薬の代わりに芳香環を架橋部として有するジエンを用いると、シクロペンタジエンとの環化反応により、一連のポリアセン(アントラセン、ペンタセンなと)誘導体を得ることができた。また、インデニル配位子をもつジルコナシクロペンタジエン錯体に対しても同様のカップリングが起こり、対応するフルオレン誘導体を得ることができた。
|