本年度は、まずマイクロフロー光・熱反応の目的生成物量の評価手段として以前の研究で用いていたHPLC-UVを用いる手法の他にNMRを用いて内部標準と目的物の積分比により求める手法を検討し、その信頼性を単離収率との比較により検証した。その結果、HPLC-UVを用いる手法に比べ、よりNMRを用いる手法のほうが単離収率との良い一致を示すことがわかり、今後、類似研究のさらなる展開を図る際に有益な知見を得ることができた。 また次に、さらなる収率の向上を念頭に置いた、副生物の構造決定に取り組んだ。反応生成物の詳細な解析の結果、現在までに幾つかの化合物の構造を推定するに至っており、その生成機構についても知見を得ている。今後、これらの知見を基盤として、さらなる検討を続けることによりより優れたプロセスの開発につながるものと期待している。 研究期間全体を通じ、申請者らは世界初となる活性型ビタミンD3およびその類縁体のマイクロフロー合成を達成し、報告されている工業法の収率を超える成績を得ることに成功した。官能基化されたビタミンD3の誘導体の光・熱反応による合成では様々な副反応が起こりうることが過去に報告されており、これを克服することにより得られた本成果は大きな意義を持つものと考えている。得られた成果はOrganic&BiomolecularChemistry誌に掲載され、審査員からの高い評価を得て、表紙にも選定された。
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