研究課題/領域番号 |
23750102
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
秦 猛志 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (40419271)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 鉄触媒 / ユビキタス元素 / 低原子価鉄試薬 / グリニャール試薬 / ジマグネシオ体 / 分子内環化反応 / 官能基共存型反応 / 官能性エンイン |
研究概要 |
申請者は,量論量または触媒量の鉄試薬を利用する多官能性環状化合物の合成法を見出し,既に報告している(Organic Letters (2008年)).そこで平成23年度は,官能性エンイン及びジエンから生じる官能性メタラサイクルを用いて種々の多官能性環状化合物合成をおこなった.具体的には,触媒量もしくは量論量のFeCl2とt-BuMgClから調製した鉄試薬に官能性エンインまたはジエン(具体的には,(E)-5,5-ビス[(ベンジルオキシ)メチル]-8-(N,N-ジエチルカルバモイル)-2-オクテン-7-イノエートまたはジメチル (E,E)-2,7-ノナジエンジオエート)を作用させ,官能性メタラサイクルを調製し,続いて求電子試薬を反応させることにより多官能性双環状化合物合成への拡張を検討したが上手く行かなかった.一方,申請者らは量論量のFeCl2とt-BuMgCl(またはPhMgBr)から調製した鉄試薬にトシラート体(具体的には,(3,3-ビス[(ベンジルオキシ)メチル]-6-(N,N-ジエチルカルバモイル)-5-ヘキシニル p-トルエンスルホネートまたは(E)-3,3-ジメチル-6-(N,N-ジエチルカルバモイル)-5-ヘキセニル p-トルエンスルホネート)を作用させると官能性アセチレンまたはオレフィン-鉄錯体の分子内アルキル化により,官能性シクロペンタンが得られることを見出している.この知見を利用し,官能性アセチレンまたはオレフィン-鉄錯体と分子内の2カ所の求電子部位へのダブルカップリング反応による多環状化合物合成へ拡張を検討したが上手く行かなかった.しかしながら,申請者は上記の知見を生かして,官能性メタラサイクルおよび分子内アルキル化の実施例を十二分に増やし,研究成果を総合論文としてまとめ,Chemistry - A European Journalに報告した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究として申請した,鉄試薬による官能性メタラサイクルおよび分子内アルキル化を利用した官能性環状化合物合成の応用利用に関しては,予定通りに行かなかったものの,予備的知見を生かして官能性環状化合物合成に関する基礎的検討を実施し,効率的に研究を推進することができた.得られた成果としては,官能性エンイン及びジエンとFeCl2とt-BuMgClから調製した鉄試薬から生じる官能性メタラサイクルの安定性および反応性の知見を詳細に得ることができ,対応する種々の官能性環状化合物を効率的に合成できた.更に,FeCl2とt-BuMgCl(またはPhMgBr)から調製した鉄試薬を官能性アセチレンまたはオレフィンを作用させると,官能性アセチレンまたはオレフィン-鉄錯体を簡便に調製することができ,その安定性および反応性の知見を詳細に得ることができた.更にその知見を分子内アルキル化に適用し,官能性環状化合物を合成することができた.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,鉄試薬を用いた官能性鎖状化合物の合成およびその応用利用を検討する.既に申請者は鉄塩触媒存在下でα,β,γ,δ-不飽和カルボニル化合物,γ,δ-エポキシ-α,β-不飽和カルボニル化合物,官能性エンイン化合物,光学活性アリルスルホネート,またはスルホニルジエンにグリニャール試薬を作用させることにより,位置および立体選択的に多官能性鎖状化合物が合成できることを見出し,既に報告している(Angewandte Chemie International Edition (2008年),Organic Letters (2010年),一部論文未発表).更に,鉄触媒を用いるγ,δ-エポキシ-α,β-不飽和カルボニル化合物の位置および立体選択的二量化反応も見出している(論文未発表).これらの初期的知見および平成23年度の鉄試薬の安定性,反応性の知見を利用し,効率的に研究を推進させる.具体的な実施事項としては,触媒量のFeCl2とグリニャール試薬を用いてスルホニルジエンをテンプレートにしたワンポット5成分カップリング反応,光学活性アレンの合成,光学活性アセチレン合成,更にアジリジンの位置および立体選択的二量化反応へ展開をおこなう.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,平成23年度同様に研究を効率的に推進できるよう物品費を中心に使用する.また,得られた成果を国内の学会等で発表するために旅費も計上する.更に,得られた研究成果を論文発表するための英文校閲費用も計上する.
|