研究課題
平成23年度では、世界で初めて安定なオキセテンを生成する[2+2]環化付加反応を見出した。この反応は、カチオン性パラジウム触媒存在下、トリフルオロピルベートとアルキン化合物を作用させることにより、光学活性な含CF3オキセテン化合物が高い化学収率及び光学収率で得られる。様々な官能基を導入したアルキンを用いて検討を行った結果、脂肪族、芳香族、また電子吸引基であるエステル、アルデヒド、CF3、さらにヨウ素やピナコールボラン、シランを含む基質において問題なく高い化学収率、エナンチオ選択性で対応するオキセテンを得ることができた。また、オキセテン化合物をこれまでにないキラルビルディングブロックとなることを明らかにした。平成24年度では、反応点が遠隔位に存在するイノンの不斉Diels-Alder反応に関する検討を行った。この反応はその不斉誘起の困難さゆえにこれまで数例しか報告例がなく、また既存の報告例すべてが基質適応範囲に問題を抱えていた。検討の結果、嵩高いDTBM-SEGPHOS配位子を有するカチオン性キラルパラジウム触媒を用いた場合に末端がシリル基の場合はもちろん、既存の系では収率に問題のあった末端にアルキル基を有する基質に関しても良好な収率及び選択性で生成物が得られることが分かった。また、この反応において特筆すべき点として、嵩高い配位子を用いた場合と嵩低い配位子を用いた場合において生成物の立体選択性が逆転するという特徴が挙げられる。この挙動に関してDFT計算を用いた分析を行った結果、この立体選択性の反転は嵩低い配位子が遠隔位において十分な立体効果を有しないことが原因で生じたジエンのエナンチオ面選択性の反転に依存している可能性が高いことが強く示唆された。
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