研究概要 |
ロジウム触媒アリール化反応の研究の過程で見出したβ炭素脱離、および1,4-ロジウム移動プロセスに着目し、それらを含む新たなロジウム触媒反応を設計し、合成化学的に有用な反応を開発することを目的として研究を行った結果、いくつかの新反応の開発に成功した。 (1) シクロブチリデン酢酸エステルとテトラアリールホウ酸ナトリウムをロジウム(I)触媒存在下反応させると、4つの不活性結合の切断、3つの炭素ー炭素結合生成を経由してスピロビインダノンを与えることを見出した。触媒サイクル中に2回の1,4-ロジウム移動を含んでいる点が本反応の特色である。 (2) また、上記スピロ環構築反応の中間体として考えられるアリールロジウム(I)中間体を、対応するボロン酸エステルから発生させることによっても類似のスピロ環を構築できることを見出した。 (3) 1,4-エンインに対するアリールボロン酸の付加をロジウム触媒存在下行ったところ、1,4-ロジウム移動を経由する環化反応が進行し、インダン誘導体を与えた。この反応に関しては今後、不斉化を行う予定である。 (4) ロジウム触媒存在下、3-フェニルシクロブテノールと内部アルキンをロジウム(I)触媒存在下反応させたところ、ロジウム(I)シクロブテノラートのβ炭素脱離を経由する形式的なアルキン挿入反応、脱水を経て1,2,3,5-四置換ベンゼンが高収率で得られた。非対称内部アルキンを用いた場合、反応は位置選択的に進行したことから、本反応が多置換ベンゼンの選択的合成において、極めて有力な手法となりうることを明らかにした。今後、類似の芳香環構築反応を各種開発する予定である。 (5) その他の反応についても種々検討を行った結果、ロジウム(I)触媒による分子内trans-ビスシリル化を用いる3-シリル-1-シラインデン生成反応を開発することができた。
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