研究課題/領域番号 |
23750120
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
藤田 恭子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90447508)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | イオン液体 / タンパク質 / 水和状態 / リフォールディング |
研究概要 |
水和イオン液体のイオン構造と水の状況が生体分子の高次構造へ及ぼす影響を明らかにすべく、核酸塩基対を用いて構造状態の検討を行った。具体的には、グアニン残基が豊富な配列で形成される四重鎖構造(G-quadruplex structure)形成能について、コスモトロピシティの異なるイオン存在下で検討を行った。検討には、生体適合性がある程度確認されているイオン液体、及び代表的なコスモトロピックな塩、カオトロピックな塩を用いた。異なるイオン濃度条件下でG-quadruplex structure形成についてCD測定により解析を行った。その結果、イオン濃度が150 μMという希薄条件下においては、G-quadruplex structure形成能はカチオンの大きさに影響を受けることが示された。これに対して150 mM条件下ではコスモトロピシティの順列とG-quadruplex structrueの安定性に相関が見られた。さらに1イオンペアに対して水が3分子という水和条件下では、コリンカチオン([ch])とリン酸二水素アニオン([dhp])の組み合わせからなる系以外では、水溶液系で観測された構造形成特性に関わらずG-quadruplex structrueは観測されなかった。[ch]と[dhp]の組み合わせからなるzwitter-ionの場合でも、G-quadruplex structrue形成が確認された。以上のように、イオン種と存在する水分子数によって形成する水の状況は異なり、この水の状況がG-quadruplex structrueに影響を及すことを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオン種と存在する水分子数によって形成される水の状態は異なり、これまで報告してきたタンパク質だけでなく核酸塩基対の四重鎖構造にも影響を及ぼすことを明らかにした。核酸塩基対の場合、存在するイオン種はもちろん水の量によっても構造形成に及ぼす影響が大きく変化することを実験的に示した。 また、各種水和イオン液体についてDSC測定を行ったところ、生体分子と親和性のよい水和イオン液体で中間水に基づくと考えられる挙動が観測された。水分活性測定でも、得られる曲線に生体分子と親和性のよい水和イオン液体に共通した特徴が確認された。 以上の様に、水和イオン液体の評価法についてある程度指針がたち、また水和イオン液体中の核酸塩基対の構造安定性についての知見も得られたので、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、当初の計画に沿って水和イオン液体の設計指針構築のための知見集積に加え、不活性化したタンパク質のリフォールディングを中心とする再生法の提案に挑戦する。まず、リフォールディング研究で報告のあるタンパク質をモデル系とし、これまでの結果から有用と考えられる水和イオン液体を用いた検討を行う。得られた知見を元にして使用するイオン液体の選択を進める。リフォールディングを達成するためにイオン液体の役割分担が必要な場合には、これらを実現するイオン液体の混合系の制御等についても検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は備品等の購入予定はなく、主な経費は消耗品である。イオン液体合成のための試薬類や有機溶媒、及びガラス器具が必要となる。イオン液体は合成後の精製が困難であるため、割高となるができるだけ高純度の試薬を選択したい。また、合成や精製に必要となるフィルターや樹脂類の消耗品も購入する。イオン液体中で解析を行う酵素や抗体などの生体分子は、性質や特性の異なる物を随時購入していく予定である。これら生体分子の水和イオン液体中への溶解性や、活性について解析、評価を行うための試薬類、市販キット等の購入にも使用予定である。イオン液体の評価や、タンパク質との相互作用についての各種測定で必要となるセルや電極も必要に応じて購入する。また、研究成果の発表、情報収集のための国内学会、国際学会の参加費としての使用を予定している。
|