研究課題/領域番号 |
23750121
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
寺口 昌宏 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30334650)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ポリアセチレン / らせん高分子 / 光学活性高分子 / 脱ピナニルシリル化 / 膜 / 階層構造 |
研究概要 |
階層的な一方向巻きらせん構造をとる高分子を合成するために、光学活性基を導入したモノマーを種々合成した。らせん構造をとり得る高分子として、ポリフェニルアセチレン候補として選び、光学活性基として、メンチル基、ピナニルシリル基などを用い、それぞれを導入したフェニルアセチレンモノマーを合成した。次に重合条件の最適化を行い、製膜可能な高重合体を合成した。[Rh(nbd)Cl]2触媒を用いた重合により、高収率で高分子量体のポリマーを得たこれらポリマーの中で主鎖により近い位置に光学活性な置換基を有するものほどより大きなコットン効果、比旋光度を示した。これらのことから、溶液状態、固体膜状態での主鎖への一方向巻きらせん構造の誘起についての知見が得られた。得られたポリマーは有機溶媒に対して優れた溶解性を示した。また優れた成膜性も示した.得られた各種高分子の主鎖の一方向巻きらせん構造の溶媒依存性についての知見が円偏光二色性(CD)測定により得られ、一方向巻きらせん構造が側鎖の水酸基間により固定されている場合、極性溶媒を用いることで一方向巻きらせん構造をオフにすることができた。またその変化は測定溶媒の極性を調節することで可逆的に行うことができた。また得られた一方向巻きらせんポリマーからソルベントキャスト法により調製した膜もCD測定でコットン効果を示すことから固体膜状態においても階層的な一方向巻きらせん構造を維持していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画として、(1)階層的な片巻きらせん高分子の合成:光学活性基を導入したモノマー類の合成、およびそれらの重合による製膜可能な高重合体の一方向巻きらせん高分子の合成を掲げたがこれらの課題は順当に達成することができた。また、2つめの課題である(2)階層的に配列制御した高分子自立膜の合成:については(1)で得られた高分子からソルベントキャスト法により合成した膜が円偏光二色性(CD)測定においてコットン効果を示したことから確認できた。また複数種の一方向巻きらせん構造を持つ高分子よりの自立膜が得られている。 以上のことから、当初の計画について概ね順調に達成できていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた階層的に配列制御された各種の高分子自立膜を用いて膜状態での光学活性基の除去を行う。最適な除去反応の条件を見出すために、各種溶媒に対する膨潤度についての知見と膨潤状態での主鎖の一方向巻きらせん構造、光学活性基の階層的配列、および高分子鎖の集合状態についての知見を円偏光二色性分光光度計、分子間力顕微鏡および分光蛍光光度計を用いて明らかにする。最適溶媒を用いた膨潤状態での光学活性基の除去を行う。光学活性基を導入した結合性基に応じて酸性条件、塩基性条件での加水分解、加溶媒分解、光ラジカル開裂など種々の反応条件を用いての光学活性基の除去を行う。また得られたナノ空孔を階層的に持つ高分子多孔膜の機能として光学異性体分離を行う。2-ブタノールのパーベーパレーションによる分離、各種アミノ酸水溶液の透過分離などを行う。また、除去した光学活性基に類似の化合物について不斉吸着実験および不斉透過実験を行い、生成したナノ空孔の不斉情報の維持、転写についての知見を得る。ブランク実験として一方向巻きらせん構造を持たない高分子自立膜を用いて同様にナノ孔を生成させた膜を調製し、光学異性体分離を行い、透過速度、選択性について比較し、階層的なナノ空孔を持つ高分子膜の超分離機能について明らかにする。また、初年度に引き続き階層的な片巻きらせん高分子の合成についてもポリフェニレンエチニレンなどポリアセチレン以外のポリマーについても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題は2年目も1年目に引き続き、合成、反応が多いため合成用試薬および精製のためのシリカゲル、溶媒などの消耗品の購入に使用する予定である。特に素材となる高分子の合成を行うために、モノマー合成のための原料化合物、溶媒、実験ガラス器具などの消耗品として必要である。また、特に2年目は固体膜のキャラクタリゼーションの一環として、固体NMR、反射UV測定などの機器分析の実施を計画している。それら測定に必要となる測定用溶媒、記録用紙などの消耗品の購入も予定している。また、研究成果を学会で発表するための学会参加旅費としての支出も計画している。
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