研究概要 |
1. 階層的な片巻きらせん構造をとる高分子を合成する方法として、(1)光学活性基を導入したモノマーの重合、(2)キラル触媒系を用いるアキラルモノマーの重合、(3)アキラル高分子のキラル溶媒中での加熱による片巻きらせん構造の誘起、の方法を、ポリ置換アセチレンまたはポリ(1,3-フェニレンエチニレン)について検討し、それぞれの方法により片巻きらせん構造を持つ高分子の合成に成功した。特に、置換ポリアセチレンに関しては立体障害あるいは水素結合により安定維持された片巻きらせん構造を持つ高分子の合成に成功した。 2. 水素結合によりらせん構造を安定化できるポリ置換アセチレン類としては側鎖に二つのアミド基を有するものを見出した。また、立体障害によりらせん構造を安定化できるポリ置換アセチレン類としてイミン結合により平面性の置換基を導入したものを新たに見出した。イミン結合は動的共有結合であるため合成が容易で種々のグループの導入が可能である。また、製膜後の除去も容易であるため不斉ナノ空孔の生成に有用である。 (最終年度に実施した研究の成果) 3. 溶液状態、膜状態での円偏光二色性スペクトルの測定により、得られた高分子が溶液状態、固体の膜状態ともに片巻き優先らせん構造を持つことが明らかとなった。また、高分子溶液をキャストすることで自己支持性の膜が容易に得られた。 4. 光学活性基を持つポリ(1,3-フェニレンエチニレン)では製膜時の溶媒に応じて片巻きらせん構造の状態の高分子膜またはランダム構造の状態の高分子膜を作り分けることが可能であることが明らかとなった。製膜後、膜状態での反応により置換基を除去することに成功した。また、光学活性基の除去により、主鎖の片巻きらせん構造のみに不斉を有する高分子膜の合成に成功した。生成した膜は2-ブタノールのパーベーパレーションにより光学分割能を示すことが明らかとなった。
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