研究課題/領域番号 |
23750122
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
永井 寛嗣 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90554808)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 高分子合成 / ラジカル重合 / リビング重合 / 環状ビニルモノマー / 剛直主鎖型高分子 / 交互共重合 / ブロックポリマー / 耐熱性高分子 |
研究概要 |
本研究では、ラジカル重合を基盤とし、様々な環状二置換ビニルモノマーの精密制御ラジカル重合を包括的に行うことを目的としており、今年度は以下の成果を得た。(1)アセナフチレン誘導体のラジカル重合を検討し、生成ポリマーの性質を明らかにするとともに、リビングラジカル重合系を構築することで、新規なポリマー設計を行った。とくに、3,8位に2つのメチル基を有するアセナフチレン誘導体をマレイミド誘導体とラジカル共重合することで、耐熱性が高く、濃厚溶液中で液晶性を示す剛直ビニルポリマーの合成が可能となった。さらに、ルテニウム錯体を用いることでリビングラジカル重合を達成し、側鎖に長鎖アルキル基を有するメタクリル酸ドデシルとブロック共重合することで、サーモトロピック液晶を構築可能なことが明らかとなった。(2)環状オレフィンの一つであるノルボルネン誘導体と、電子受容性環状二置換ビニルモノマーであるマレイミド誘導体とのラジカル共重合を検討し、生成ポリマーの性質に関して調べた。様々な一置換および二置換ノルボルネン誘導体を合成し、マレイミド誘導体とのラジカル共重合性を調べたところ、ノルボルネン置換基がかさ高くなるにつれてラジカル共重合性が低下することがわかった。とくに、無置換のノルボルネンとマレイミドとのラジカル共重合をフルオロアルコール中で行ったところ、高い透明性と耐熱性をあわせもつ、交互共重合体が生成することもわかった。(3)環状ビニルエステルの一つであるビニレンカーボネートのリビングラジカル重合に関して検討を行った。アクリレート型の開始種を生成するザンテートをRAFT試薬として用いることで、リビングラジカル重合を達成し、ビニレンカーボネートと酢酸ビニルからなるブロック共重合体の合成も可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な環状二置換ビニルモノマーのラジカル(共)重合系を設計することで、主鎖に環状骨格を有する多様なポリマーの合成が可能であり、剛直性や耐熱性を有するポリマーの合成が可能になることが明らかになっている。また、リビングラジカル重合系と組み合わせることで、分子量の制御が可能になることもわかりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
前年度得られた成果を踏まえ、本年度は以下の研究内容に関して検討を行う。1.前年度得られた、種々の環状ビニルモノマーのリビングラジカル重合系を用い、様々なブロック共重合体の合成へと展開する。特に、剛直な環状二置換ビニルモノマーと柔軟な汎用ビニルポリマーからなる熱可塑性エラストマーの合成について検討を行い、得られるポリマーの性質について調べる。2.前年度までに、環状スチレン誘導体の一つであるアセナフチレン誘導体のラジカル重合制御の知見を生かし、他の環状スチレン誘導体であるイミノスチルベンやインデンなどの制御ラジカル重合系の構築を行う。また、これらモノマーのカチオン重合系の設計も行い、得られるポリマーの性質を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、耐用年数を超過しており性能が低下した真空ポンプを購入予定である。モノマーおよびポリマー合成時に使用する試薬・ガラス器具、および得られるポリマーの分光学的特性を調査するために使用する光学用セルに関しても購入予定である。消耗品であるNMRチューブおよびGPCカラムは、既存のものを順に取り替える形での購入を検討している。
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