本研究では、ラジカル重合を基盤とし、様々な環状二置換ビニルモノマーの精密制御ラジカル重合を包括的に行うことを目的としており、今年度は以下の成果を得た。 (1)ノルボルネン誘導体と、電子求引性環状ビニルモノマーであるマレイミドとのラジカル共重合により、透明性や耐熱性の良好な剛直高分子の合成をめざした。本年度はとくに、ノルボルネン誘導体が共重合性に与える影響について明らかにし、ノルボルネンのエンド位の置換基の立体障害が共重合性を低下させることを明らかとした。さらに、この共重合をフルオロアルコール中で行うことで、ほぼ交互組成の共重合体が得られることを見出した。この交互共重合体は、非常に高いガラス転移温度(300 °C)と熱分解開始温度(Td5 ~ 400 °C)を有しており、透明性の高い高分子材料となることが明らかとなった。さらに、鉄錯体を用いた重合系を設計することでリビングラジカル共重合が進行し、分子量の制御やアクリル酸エステルとのブロック共重合体の合成が可能となることもわかった。 (2)インデン誘導体のラジカル共重合系を設計することで、新規な剛直主鎖型液晶ポリマーの合成を検討した。インデンの1-位や4-位に様々な置換基を導入した誘導体を設計し、N-置換マレイミドとのラジカル共重合をフルオロアルコール中で行うと、1-位にジメチル基を有するインデン誘導体を除き、ほぼ完全な交互共重合体が得られることがわかった。生成ポリマーの耐熱性や液晶性に関して評価したところ、いずれの共重合体も340 °C以上の熱分解温度(Td5)と、200 °C以上のガラス転移温度をもつことが示された。とくに、1-位にtert-ブチル基を有するインデン誘導体から得られた共重合体のガラス転移温度は300 °C以上にまで向上し、濃厚溶液中でリオトロピック液晶性を示すことも明らかになった。
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