研究課題
デンドロナイズドポリマーの表面を機能化するためには、末端に分子変換容易な官能基を有するデンドロナイズドポリマーの合成方法を確立する必要がある。従って、まず変換可能な官能基を有するデンドリマー状カルボカチオンの発生とポリマーとの反応について十分に検討する必要がある。研究代表者のデザインした末端にハロゲン化アリール構造を持つデンドロナイズドポリマーはパラジウム触媒を用いた溝呂木―Heck反応、鈴木―宮浦カップリング、Buchwald-Hartwigアミノ化反応などによって、多様な表面修飾が簡便に行えると期待される。1.変換可能な官能基を有するデンドロナイズドポリマーの合成末端にハロゲン化アリール構造(フッ素よりも反応性の高い塩素、臭素、ヨウ素)を有するデンドリマー状カルボカチオンを電気化学的に発生させ、ポリスチレンをはじめとする汎用ポリマーとの反応を検討した。その結果、ヨウ素の場合を含めすべての場合で目的のデンドロナイズドポリマーが得られた。また、NMRによってカチオンを観測出来たことから、ハロゲン元素がカルボカチオンと相互作用している可能性は低いため、いずれのハロゲン元素を有するカルボカチオンも高い反応性を保持していると考えている。2. 官能基変換による表面修飾デンドロナイズドポリマーの合成末端のハロゲン化アリールの変換反応として、鈴木―宮浦カップリング反応によるピレンの導入を検討した。ピレンボロン酸を用いた場合に対応するデンドロナイズドポリマーが得られることが、MALDI-TOF MSによる分析からも明らかになった。また、Buchwald-Hartwigアミノ化反応を用いてトリアリールアミンで修飾されたデンドロナイズドポリマーの合成にも成功し、サイクリックボルタメトリーによって可逆な酸化還元挙動を観測することが出来た。
2: おおむね順調に進展している
(理由) 申請者はすでに様々な機能性デンドロナイズドポリマーを合成するための基盤となる、変換可能な置換基を有するデンドロナイズドポリマーの合成に成功している。また、表面のブロモ基に対して鈴木-宮浦反応などを行うことで、対応する表面修飾デンドロナイズドポリマーが得られたことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
デンドロナイズドポリマーの表面修飾において表面のブロモ基の変換率を以下に向上させるかが、大きな課題になると考えている。現在、モデル化合物を用いた触媒系の最適化を行っており、この探索によって最適化された触媒を用いる予定である。
備品の購入は予定していない。ガラス製電解セルと電気化学測定に必要な電極などを所望品として購入する予定である。また、今年度までに得られた成果について論文発表を行うための資料作成費用と電気化学会合同大会(ハワイ)において口頭発表を行うための渡航費用を計上している。
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