研究課題/領域番号 |
23750128
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寺尾 憲 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60334132)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アミロース誘導体 / 剛直環状鎖 / 光散乱 / 小角X線散乱 |
研究概要 |
剛直性や種々の溶媒への溶解性の異なる誘導体を得るため、直鎖および環状アミロースのカルバメート誘導体を複数調製した。希薄溶液の光散乱、粘度、小角X線散乱、赤外吸収、円二色性等を測定し、希薄溶液中での局所構造および分子鎖の剛直性を決定した。直鎖のアミロースアルキルカルバメート誘導体類はTHF中で剛直らせん構造をとるが、そのらせん構造はアルキル鎖長に著しく依存する、すなわち側鎖であるアルキル鎖が主鎖のらせん構造に強く影響することを見出した。さらに、環状鎖の研究からは、適切なカルバメート化処理により重合度25-290の範囲の剛直環状鎖が得られたことがわかった。また剛直であることから、環状鎖の局所コンホメーションは主鎖のそれとは少し異なることが見出された。さらに、この違いが、分子間相互作用にも顕著な影響を及ぼすことが明らかになった。 他方、剛直な直鎖アミロース誘導体の液晶研究からは、THF中と乳酸エチル中で異なる液晶相(前者はネマチック相で後者はスメクチック相)を発現することが見出された。溶媒によって出現するリオトロピック液晶相が異なることは現在のところ珍しい例である。偏光顕微鏡を活用して相図を決定し、さらに前者のコレステリック液晶構造の濃度温度依存性について検討するとともに、両者について、未処理及び磁場配向処理試料の偏光顕微鏡観察、小角X線回折、電子顕微鏡観察を行い、それぞれの相中における分子鎖の挙動を詳細に調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環状鎖誘導体の希薄溶液研究は2つの誘導体についてほぼ完了し、現在論文執筆の準備に移っている。。また、直鎖の希薄溶液研究はほぼ完了し、液晶構造の研究についても直鎖アミロース誘導体についてはほぼ実験を完了し、今後詳細な解析及び論文執筆に移行する予定であり、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
環状鎖については、キラルカラムなどとして、より有用な誘導体となる可能性のある3,5-ジメチルフェニルカルバメートを調製し、その溶液中での形態および分子間相互作用について調べる。また、昨年度研究した剛直環状鎖については、今後リオトロピック液晶の研究に進展させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
誘導体調製にかかる試薬や器具、散乱実験や分光測定に必要なセルやフィルターなど、放射光を用いた小角X線散乱実験に必要となる消耗品費や旅費、そして、研究成果を発表するための旅費として使用する予定である。
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