研究課題/領域番号 |
23750129
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福原 学 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30505996)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / イタリア / イオン性液体 |
研究概要 |
今年度の研究目的はポリチオフェンを基盤とする新規なキラリティーセンサーを構築することにある。申請者はすでに、キラルなビナフトクラウンエーテル側鎖をもつポリチオフェンがアミノ酸であるバリンを比較的高いエナンチオ選択性で認識することを見出しており(Chem. Eur. J. 2010, 16, 7859)、申請者が打ち出したアロステリックキラル増幅機構が機能することを証明した。そこで本年度は、より生態系でのセンシングに近づけるために、水溶性シクロデキストリンを側鎖に持つポリチオフェンを合成し、これのキロプティカル特性ならびにキラル認識能について詳細に検討した。その結果、ジペプチドであるフェニルアラニルフェニルアラニンに対して13.7とこれまでの最高値を達成した。この結果は、現在Chem. Eur. J.に投稿中である。さらにビナフト系においては、蛍光検出も可能であることを見出し、Chem. Comm.の表紙に選ばれた。また糖認識系では、水溶性ポリチオフェンとカードランが非常に高感度で特定の糖を認識できることを明らかにし、これはJACSに掲載された。光不斉反応に関しては、ナフトイルカードランをキラルホストとするシクロオクタジエンの不斉異性化反応においてこれまでの超分子系の値を上回ることに成功し、Org. Lett.に掲載された。最後にイオン性液体をテンプレートとする光不斉反応にも展開でき、この結果はOrg. Biomol. Chem.に掲載された。このように、基底状態センシングだけではなく、この機構を応用することで、励起状態反応へあらたな展開をもたらすことが出来たのには、学術的に非常に重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したようにキラリティーセンシングに関しては、Chem. Comm.の表紙に選ばれたものの、当初予定していたシクロデキストリンポリチオフェンの系がまだ掲載されていないため、若干おくれている。しかしながら、これはレフリーのコメント待ちであるため、大幅な遅れではない。また、糖認識に関しては既に報告できたので、こちらも順調である。さらにこれのフルペーパーを作成中である。光不斉反応については、当初予定していたナフトイルカードランの他にも、イオン性液体にも発展できたので、こちらも順調である。従って、全体を総括すると、おおむね順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、シクロデキストリンポリチオフェンの系を足がかりに、さらに新規なポリチオフェンベースのキラリティーセンサーの構築を目指す。糖認識に関しては、フルペーパーにしているが、ポリチオフェンとグルカン類が新規な錯形成をすることを見出したので、これを基にあらたなセンサーの構築を行う予定である。また糖認識に関しては、現在さらなる高感度糖センサーの合成に取り組んでいるところであり、こちらも重点的に進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
従って、目的ポリマーの合成試薬および溶媒、ならびに分光溶媒として今年度と同等の費用を計画している。また、キラル認識に欠かせない、CDスペクトルのミラー・ランプの交換費およびキラル液クロにも同様の金額を予定している。最後に、これら得られた結果の学会発表のための旅費を昨年と同様額、計画している。
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