研究課題
今年度行ってきたのは、機能性ホストを用いる基底状態超分子センシングと励起状態超分子キラル光反応である。昨年から引き続き、ポリチオフェンを基盤とするセンサー開発を行っており、より生体系センサーへと近づけるために水溶性シクロデキストリンを側鎖にもつポリチオフェンを合成した。これのアミノ酸・ペプチド類のセンシングを行ったところ、ジフェニルアラニン系で最高の13.7というエナンチオ選択性が観測され、これらの結果はChem. Eur. J.誌に載った。また超分子キラル光反応においては、従来の糖をキラル補助基とする方法からキラル足場として利用する方向へと展開し、キラル足場に適したモデル光反応として2-アントラセンカルボン酸(AC)の不斉環化二量化反応を行った。この結果、環状四糖であるcyclic nigerosylnigerose (CNN)をキラル足場とするACのジアステレオ区別環化二量化反応において、化学収率96%、光学収率99%というこれでまでキラル光化学で達成困難であった究極的なジアステレオ選択性を達成し、この結果はChem. Commun.誌に載った。
2: おおむね順調に進展している
機能性ホスト分子を用いるキラルセンシングでは、既に新たなリポーター分子を修飾したカードラン系において、4糖であるアカルボースをアロステリックにセンシングできることを見出しており、論文として発信できる目処はついている。カードランセンサーに関しては、Chem. Commun.誌1報、Org. Lett.誌1報、J. Am. Chem. Soc.誌1報と順調に進行している。ポリチオフェンセンサーに関しては、Chem. Eur. J.誌に2報、Chem. Commun.誌に1報報告してはいるものの、当初計画していたものとは若干の進行の遅れがあるので、(2)とした。
最終年度である今年は、カードランセンサーに関しては、リポーターとin situで形成する複合センサーの結果を論文にまとめ、新たなリポーターを修飾した修飾カードランによるオリゴ糖センシング系を論文化する予定である。また、現在新たに取り組んでいるカードランをキラルホストとするキラルセンシングについても取り組む。ポリチオフェンセンサーに関しては、ポルフィリンを側鎖にもつものと、シクロデキストリンを融合したものを二つ同時に進行させており、これらを期間内に完遂する予定である。
引き続き、試薬費用はある程度必要となるが、最終年度であることから、これまでの成果発表を国内・国外を問わず行い、積極的に招待講演を引き受けるよていであり、これら出張費にもある程度研究費をまわす必要があると考えている。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件) 学会発表 (31件)
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