研究課題/領域番号 |
23750130
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
平野 朋広 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (80314839)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 水素結合 / 不斉誘導ラジカル環化重合 / 立体規則性 / 主成分分析 / NMR |
研究概要 |
酒石酸ジイソプロピル存在下トルエン中低温でN-アリル-N-tert-ブチルアクリルアミドのラジカル重合を行った.1H NMRからほぼ定量的に環化反応が進行していること,温度の低下とともにcis立体構造のモノマー単位が優先的に生成することが明らかとなった.さらに,得られたポリマーの円二色性スペクトルに明確なコットン効果が観測され,重合温度の低下とともに大きくなることもわかった.モノマーと酒石酸エステルが水素結合を通して錯形成することで,不斉誘導ラジカル環化重合が進行したと考えられる. α位にフッ素を導入したN-n-プロピル-α-フルオロアクリルアミドの低温ラジカル重合を極性溶媒中で行うとシンジオタクチックリッチなポリマーが,トルエン中でアルコールを添加するとヘテロタクチックポリマーが得られることも見出した.特に,ノナフルオロ-tert-ブタノールを添加するとヘテロタクチック3連子が82%を越えるポリマーが得られた.ラジカル単独重合で得られるポリマーとしては,これまでで最も高い規則性であった. 立体特異性低温ラジカル重合法によって,3種類の立体規則性(イソタクチック,シンジオタクチック,ヘテロタクチック)ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)を合成し,得られたポリマーの1Hおよび13C NMRスペクトルに主成分分析を適用したところ,2連子および3連子立体規則性による帰属を矛盾なく説明できることを見出した.HMBCスペクトルで得られる情報と同レベルの情報が得られたことを意味しており,本手法が合成高分子の新しいキャラクタリゼーション法になることを強く示唆している.2連子レベルの定量情報しか有さない1H NMRスペクトルと13C NMRスペクトルから別途求めた3連子立体規則性を用いて部分最小二乗回帰を行えば,1H NMRスペクトルからでも3連子立体規則性を推定できることも見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である「水素結合を利用した立体特異性ラジカル重合系の開発」および「統計的2次元NMR法によるポリマーのキャラクタリゼーション」について,予定通りの成果が出つつあるため.
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今後の研究の推進方策 |
現在成果が出つつある「水素結合を利用した立体特異性アニオン重合」について,詳細な検討を行う.また,対象とするポリマーの種類を変えて統計的2次元NMR法の有効性を調べていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
反応試薬やNMR測定用の重水素化溶媒,および合成用ガラス器具やNMRチューブなど、物品の購入に当てる.
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