研究課題/領域番号 |
23750135
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
遠藤 洋史 東京理科大学, 工学部, 助教 (90455270)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | グラフェン / 超分子ゲル / 有機-無機ハイブリッド / 自立膜 / リチウム電池 / 酸化チタン / 多孔質構造 / ATRP |
研究概要 |
回生エネルギーの有効利用やCO2排出、地球温暖化抑止といった環境低負荷の観点から省エネ・グリーン社会の実現に向けたキーデバイスとして、リチウムイオン電池や大容量キャパシタの高性能化が求められている。貯蔵媒体の容量向上やフレキシブル性が、システムの高効率化・多目的性の鍵をにぎっていることから、(1)精密なナノ構造制御を適用すること、(2)結晶性活物質の充填率を高めること、(3)電解質との接触面積が大きな自立性電極材を設計することが必要となる。本助成では、これらの課題を克服すべく高分子・界面化学からのアプローチによりグラフェンへの化学修飾や酸化チタンナノ結晶との複合化、コロイド粒子を鋳型とした多孔質構造の構築に取り組んだ。グラフェンの作製法にはグラファイトを化学処理することで酸素官能基を導入した酸化グラフェン(GO)を得る方法があり、化学修飾や無機材料を固定することが出来る利点がある。しかし酸素官能基の導入はsp2炭素を崩壊させてしまうため、グラフェン本来の特性を復元するには還元を行う必要がある。本実験では炭素鎖修飾したTiO2の還元能を利用し、還元されたGO(rGO)を得ること及び炭素鎖修飾したTiO2とのコンポジットを試みた。GOの合成は既存のHummers法により合成し、炭素鎖修飾したTiO2(OA-TiO2)はオレイン酸をキャッピング剤に用いて低温加水分解により合成した。GOの還元工程は、GOとOA-TiO2をエタノール、トルエンに分散させ、容器に窒素を充填し撹拌しながらUV光を照射した。得られたrGOの評価はRaman、XPSにより評価を行った。また、OA-TiO2とのコンポジットは溶媒への分散性やTEMにより評価した。XPS測定よりrGOの評価を行ったところ、C 1sのピークにおいてC-Oのピークが減少していることからGOから酸素官能基が除去され還元が進行した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化チタンナノロッドとの、液-液界面を利用した独自のハイブリッド化により高品質のグラフェンへの還元処理に成功した。また、modified Hummers法により得られた酸化グラフェン(GO)とポリスチレン(PS)粒子との複合化、粒子配列、鋳型粒子の除去を経て多孔質構造化することで、グラフェンナノシート含有の多孔質電極材の作製を行った。GOと懸濁重合法により作製したPS粒子(粒径:1.36 μm)を混合させ、π-πスタッキング相互作用を利用し互いを吸着させた。この複合体(PS / GO)をシリコン基板上にキャスト法を用いて配列させ、補強材として表面へ導電性高分子であるPEDOT/PSS溶液を塗布し、固化後、最後にクロロホルム溶液に浸漬させ鋳型粒子を除去した。各分光分析の結果、多孔体内にグラフェンが残存していることが確認された。さらに、フレキシブル性という観点で、アミノ酸誘導体の超分子ゲル化剤とGOとの融合を行い、還元後もマトリックスゲルが維持された自立型のコンポジットを得ることができた。以上より、おおむね順調に研究は推進できている。
|
今後の研究の推進方策 |
グラフェン含有多孔体電極材についての電気化学測定を行う必要がある。また、超分子ゲル中でのグラフェンフィラーの配向や配合率の違いを詳細に検討していく必要がある。
|
次年度の研究費の使用計画 |
電極材としての評価を行うために、主に電気化学測定に必要な試薬・機材に充当する。また、本成果を積極的に対外アピールするための国内・外の学会参加費や旅費に充当する計画である。
|