研究課題/領域番号 |
23750137
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
吉川 佳広 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究員 (30373294)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生分解性高分子 / 酵素 / 偶奇効果 / 原子間力顕微鏡 / 走査型トンネル顕微鏡 / 高配向グラファイト / 薄膜 / 自己組織化 |
研究概要 |
本年度は、生分解性高分子の偶奇効果に基づく規則的配置を目的に、側鎖にアルキル鎖を有するポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の自己組織化条件について探索した。溶媒をクロロホルムあるいはトルエンとして、様々な濃度のPHA溶液を調製した。そしてスピンキャスト法により高配向グラファイト(HOPG)上に成膜して、形成された自己組織化膜の形態を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。その結果、クロロホルムよりはトルエンから成膜した方が、HOPGの結晶格子に沿って分子集合体が観察できることを見出した。また、スピンキャストだけではなく、所定温度でアニーリングすることで、板状の結晶がきれいに配列した超薄膜を作製できることがわかった。形成された結晶内では分子鎖が基板面に配向していることが予想されるため、次年度以降に酵素の規則的配列に用いていく予定である。 HOPG基板に対する分子固定化ユニットとしては、アルキル鎖が重要な役割を果たしている。そこで、二次元表面での偶奇効果を詳細に検討するため、アルキル鎖を有するモデル化合物を合成し、偶奇効果の発現機構について検討した。フェニルオクタンとHOPGの固液界面に自己組織的に形成される自己組織化膜を走査型トンネル顕微鏡(STM)で分子レベルの観察を行った。その結果、ある一定のアルキル鎖長から偶奇効果が基板上で発現することがわかった。すなわち、炭素数が17以下では偶奇効果が発現しないが、18以上では異なる二種類の二次元構造が交互に観察され、偶奇効果が発現することがわかった。興味深いことに、溶媒の炭素数を変更してフェニルノナンで同一の観察を行っても、偶奇効果の発現する境界の炭素数は変化しないことがわかった。今後、PHAの規則的配列に役立てていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
側鎖にアルキル鎖を有するポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の単層膜の作製条件についてはある程度の知見が得られた。PHA自体の偶奇効果の発現には至っていないが、その他のモデル化合物について、偶奇効果が発現する特異なアルキル鎖長を明らかにすることができたため、次年度以降の酵素の規則的配列には順調に進んでいくことができるため。
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今後の研究の推進方策 |
偶奇効果について更に詳細に検討を進め、特定の高分子だけではなく様々な物質に適用できる法則を見出すことを目指す。生分解性高分子表面上に酵素を配置していくため、酵素と基質との相互作用を定量的に解析していく。そして、最適な酵素を探索する。最終的には、特定の領域に酵素等の機能物質を集積化してソフトマター表面の機能化に資する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に大きな変更は無いため、当初の予定通りに予算を使用していく予定である。
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