研究課題
有機・高分子物質の基板上への集積化に向け、グラファイト上での自己組織化に関する研究を実施した。特に生分解性物質や生体分子が持つエステル結合、アミド結合、カルバモイル結合を担持させたモデル化合物を合成した。そして、基板との相互作用部位であるアルキル鎖の鎖長と形成される二次元構造の関係について詳細に検討した。前年度までには、化合物単体での偶奇効果について検討したが、今年度は各化合物のブレンドが形成する二次元構造を走査型トンネル顕微鏡で解析した。その結果、特定の組み合わせのブレンドにおいて、単体では見られなかった上に、これまでに無い新しい二次元構造が発現することを見出した。さらに、単体では鎖長が短いほどアルキル鎖長の効果は希薄になるが、ブレンドの場合には鎖長が短いほど鎖長効果が顕著に表れることを発見した。このように、結合様式およびアルキル鎖長により二次元パターンを多様化させることに成功した。次いで、生体分子の機能的な集積化法の開発を目指し、生分解性高分子の一つであるポリヒドロキシブタン酸(PHB)の重合酵素(PhaC)を基板上に配置した。そして、ポリカプロラクトン(PCL)で全て被覆した後、PhaCをリパーゼによる酵素分解で露出させた。このとき、リパーゼはPhaCを分解せず、PCLのみを酵素分解するため、特定領域のPhaCを露出させることができた。PhaCが確かにPHBの重合機能を保持していることを確認するため、PHBのインビトロ重合を行った。その結果、PHBが合成された領域がPCLの被覆面より隆起した様子が原子間力顕微鏡観察により認められた。したがって、包埋した酵素を特定領域で露出させて機能を発現させる生体分子集積化法を開発できた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
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