研究課題
本研究の目的は発光性金属クラスターを作製し、表面プラズモンを有する金属ナノ粒子上に集積させることでプラズモン増強により金属クラスターの発光効率を向上させた階層構造を持つ新しい発光性金属ナノ粒子を作製することとである。今年度は末端にチオール基を持つ一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド)を含む緩衝溶液に硝酸銀水溶液を加えた混合溶液を作製し、この溶液に還元剤(NaBH4)を加えることによって銀イオンを還元した銀クラスターの作製を試みた。また、作製した溶液を蛍光光度計にてスペクトルを測定し、銀クラスターの形成状況について測定を行った。その結果、NaBH4還元剤を投入後、徐々に蛍光が増強し、銀クラスターが形成していることが明らかとなった。また、核酸塩基の配列によってスペクトルに変化があることも明らかとなった。作製した銀クラスターは徐々に蛍光が弱くなっていくが、種々の条件の元で長時間安定に発光する銀クラスターの作製について検討した。作製した溶液のIRスペクトル測定やUV-Vis測定などから核酸塩基と銀クラスターのエネルギー的相関や構造についても検討を行い、特定条件下では長期間の発光が可能であることを明らかにした。 作製した銀クラスターの発光増強を検討することを目的として、電子線ビームリソグラフィー技術を用いて約30nmの金ドットアレイをガラス基板上に作製した。作製した金ドットアレイに作製した銀クラスター溶液を滴下して発光観察を行ったところ、消光は観測されなかった。このことから金ドットアレイに銀クラスターが集積化したと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載の平成23年度計画に従って実験を進めた。その結果、目的とした成果が得られ平成24年度の計画に移行できる状態となったため、おおむね順調に進展していると判断した。
交付申請書に記載の通り、発光性銀クラスターを集積化した粒子、あるいは基板を用いて吸収スペクトル、発光スペクトルあるいは発光強度の測定を行い、光学特性を明らかにする。また、銀クラスターを作製するオリゴヌクレオチドの配列を制御し、発光状態の変化について検討を行う。溶液状態でのスペクトル測定が難しい場合は、基板上での測定を中心に進める。この場合は1粒子に相当する金ドット上での顕微分光法を用いることで光物性についての詳細な情報を得られるように実験を進める。
次年度は、DNAや試薬など消耗品(物品費)として1,100,000円、学会発表などの成果報告のための旅費として200,000円、その他の論文執筆に係る経費として200,000円の合計1,500,000円を予定している。また、支払いが次年度となった平成23年度経費については平成23年度中に実施した物品費の支払いに使用する。
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