本研究の目的は発光性金属クラスターを作製し、表面プラズモンを有する金属ナノ粒子上に集積させることでプラズモン増強により金属クラスターの発光効率を向上させた階層構造を持つ新しい発光性金属ナノ粒子を作製することとである。 末端にチオール基を持つ一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド)を含む緩衝溶液に硝酸銀水溶液を加えた混合溶液を作製し、この溶液に還元剤(NaBH4)を加えることによって銀イオンを還元した銀クラスターの作製を試みた。また、作製した溶液を蛍光光度計にてスペクトルを測定し、銀クラスターの形成状況について測定を行った。その結果、NaBH4還元剤を投入後、徐々に蛍光が増強し、銀クラスターが形成していることが明らかとなった。また、核酸塩基の配列によってスペクトルに変化があることも明らかとなった。 作製した銀クラスターの発光がプラズモンによって増強あるいは消光される課程を観察するために、金ナノ粒子のと混合溶液を作製した。しかしながら、明確な発光増強を確認することはできなかった。そこで、より精度の高い測定のためにEBリソグラフィーによる約30nmの金ドットあるいは金ダイマー構造を作製して、チオール基を介して銀クラスター溶液を結合させた。消光は観測されなかったことから金ドットに銀クラスターが集積化したと考えられる。一方、ダイマー構造はラマン散乱増強などを誘起するが、今回の発光増強には寄与がなかった。これは銀クラスターの吸収帯などとカップリングしたかったことが考えられ、結合させるナノ構造として銀やアルミニウムによる構造を検討する必要があることがわかった。
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