研究課題
単結晶内でホストーゲスト化学に由来する分子認識力を示す細孔性錯体結晶、結晶スポンジを開発し、それを用いた極小量化合物の構造決定法を確立した。結晶スポンジは、分子サイズの孔が無数に空いた単結晶の材料である。その孔の壁にあたる部分には分子ホストにも使われる電子不足な有機配位子が使われており、単結晶の中でも強い分子認識力を示すことができる。そのため、単結晶の外部から導入したゲスト分子は細孔内に強くトラップされ、あたかもホスト結晶の結晶構造解析が可能となる。この手法を用いると、100μm角の結晶スポンジ1粒を用いて僅か5μg以下の量のサンプルを、それ自体を結晶化することなく結晶構造解析できるようになった。さらに、実験室系のX線装置を用いて条件を追求したところ、最少で50ngの化合物の結晶構造を解き明かすことにも成功した。この「結晶スポンジ法」は未知の化合物の構造決定さえもわずか5μgというサンプル量で行うことができる。そして、サンプル自体の結晶性を問題としないどころか、液体の試料でさえも結晶構造解析が可能である。また、ホストである細孔性錯体が持つ重元素の効果によって、光学活性な化合物の絶対構造をただ結晶スポンジにサンプルを浸すだけで、化学的な重元素の導入をせずにできることが分かった。この性質を用いて、最新の海洋天然物であるミヤコシンAの絶対構造決定にも挑んだ。その結果、通常の条件では全く単結晶が得られなかったミヤコシンAの結晶構造をたった5μgのサンプル量で決定でき、分子内に含まれる3つの不斉炭素の絶対配置を明瞭に決定することに成功した。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Nature
巻: 495 ページ: 461-466
10.1038/nature11990