本研究ではフォルダマー挙動を示す共役系ポリマーの側鎖にキラルなロタキサンを導入してフォルダマー形成を制御し、さらにロタキサンスイッチによるπ集積系を制御することを目的としている。これまでに側鎖に光学活性なビナフチル基をもつ輪成分を導入したロタキサンモノマーおよび分子不斉ロタキサンモノマーから酸化カップリング重合によりポリ(m-フェニレンジエチニレン)を合成し、その構造を各種スペクトルから評価した。酸と塩基によりロタキサンの軸中のアミノ基をアミン<->アンモニウム塩に変換すると、クラウンエーテル骨格を有する輪成分との相互作用が変化して、その結果主鎖と輪成分の距離を制御できる。前述のポリマーにおいて酸・塩基処理すると、塩基性で輪成分が主鎖近傍に存在(アミン型)の場合、貧溶媒中ではポリマー主鎖がキラルな高次構造を形成することを見出した。同様に分子不斉ロタキサンを側鎖に導入したポリアセチレンでは、ビナフチルをもつ輪成分の系よりも明確なスイッチ効果とらせんキラリティー誘起効果が得られることがわかった。25年度はらせん構造の詳細について確かめるために、ユニット構造のモデル分子を合成しそのスペクトル解析を行ったところ、前述のキラルな高次構造は内孔を有するらせん構造であることを支持する結果を得た。また、さらに分子スイッチによるらせん構造制御について検討するために、酸や塩基に対して輪成分の移動がこれまでのモノマーとは反対の方向に移動するようなモノマーも設計・合成し、そのポリマーの高次構造についても評価を行った。その結果、酸性で輪成分が主鎖近傍に存在(アンモニウム塩型)する場合、主鎖の極性が高く、らせん形成の駆動力となる主鎖間のπスタックが起こりにくくなるため、内孔を有するらせん構造を形成しずらくなることがわかった。
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