研究課題/領域番号 |
23750150
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 慎太郎 東京工業大学, 理工学研究科, 特任助教 (70422558)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | プローブ顕微鏡 / グラフェン / 表面・界面物性 / ナノ材料 |
研究概要 |
多彩な電子状態を持つナノ炭素物質として、フラーレンや炭素ナノチューブと並びナノグラフェンと呼ばれるナノサイズのグラフェンシートが注目を浴びている。化学構造論の観点から、グラフェンの幾何学構造はアームチェア端とジグザグ端と呼ばれる二種類の端構造の組み合わせで記述することができるが、ナノグラフェンではジグザグ端の存在により、エッジ状態と呼ばれる特異な電子状態を示すことが知られている。このエッジ状態は、ナノ炭素物質の(1)化学反応時の化学活性の発現や、(2)局在スピンを有する多様な磁気的特性の発現に深くかかわっていると考えられている。本研究ではグラフェンの酸化反応とプローブ顕微鏡による原子マニピュレーション技術を駆使してナノグラフェンのエッジ状態の作製し、その電子状態を解明する。これまでの研究からグラフェンの酸化により。低次元酸化構造に由来するジグザグ終端ナノリボン状グラフェンフラグメントが作製できること見出しているが、それに加え、酸化によりパイ電子ネットワークが分断された、パッチ状のナノサイズグラフェンフラグメントが作成できることをプローブ顕微鏡による高分解能観察から確認した。トンネル電流観察から、約1-10nm程度のサイズのパイ電子ネットワークでは端の存在により量子サイズ効果が顕著に現れ多彩な電子状態を示すことが確かめられた。また、グラフェンは、ハニカム格子の幾何学構造に起因する2種類の典型的なエッジ構造(アームチェア、ジグザグ端)を持つが、それらの端構造に対応すると考えられる特徴的な電子状態を実験的に確認できた[AngewChem2012]。ジグザグ端構造を持つグラフェンフラグメントには見られない、明瞭な超周期の空間分布を示す電子状態がアームチェア構造には現れることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、高分解能観察のためにプローブ顕微鏡制御装置を新規に導入することで、当初の目的のひとつである"酸化により作成されたグラフェン端の電子状態の原子分解能観察"に成功した。このことにより、グラフェン端の幾何学構造応じた、特徴的な電子状態の実験的な解明に近づいた。当初の計画にあるようにプローブ顕微鏡を用いた(低次元)酸化構造のマニピュレーションによるグラフェン端の作成は今後の進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初は低次元酸化によるジグザグ終端ナノリボン状グラフェンフラグメントの作製を念頭においていたが、それに加えに、パッチ状のグラフェンフラグメントを作製し、それらの幾何学構造(アームチェア、ジグザグ端構造)に応じた、特徴的な電子状態の空間分布を確認することに成功した。今後は電子的機能・化学活性の観点から、これらのパッチ状のグラフェンフラグメントの電子状態に由来するバンドギャップ、電気伝導度などの定量的な評価を進める。当初の計画にある、ジグザグ終端ナノリボン状グラフェンフラグメントのプローブ顕微鏡マニピュレーションも併せて進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の微修正により生じた執行残高は、プローブ顕微鏡制御装置(H23年度購入)のアップデート(外部通信用PC購入)に使用する。以上で研究に必要な設備は整うため、次年度の研究費は補足的な量子化学計算、研究成果発表への利用を計画している。
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