研究課題/領域番号 |
23750150
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 慎太郎 東京工業大学, 理工学研究科, 流動研究員 (70422558)
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キーワード | グラフェン / プローブ顕微鏡 / 電子状態 |
研究概要 |
グラフェンシートを切断することでアームチェア端およびジグザグ端とよばれる典型的な端構造を作り出すことができるが、それらの端周辺の電子状態はバルクのそれから大きく変調される。アームチェア端近傍では、電子波の谷間散乱に由来する定在波状態が発生し、一方ジグザグ端では端境界に局在した非結合π電子状態(エッジ状態)がフェルミ準位に生じる。このエッジ状態は、局在スピンを有するため、ナノ炭素物質の(1)化学活性や(2)多様な磁気的特性の発現に深くかかわっていると考えられる。本研究では酸化グラフェンを還元することで酸化ジグザグ端構造を作製し、エッジ構造に依存した電子状態について、プローブ顕微鏡高分解能観察と密度汎関数法シミュレーションの協業により、原子レベルでの構造-電子状態相関の解明を試みた。 酸化グラフェンを還元することで、酸素で修飾された面内欠陥構造を作製した。プローブ顕微鏡マニピュレーションにより、欠陥周りの局在π電子状態(エッジ状態)が ON/OFF スイッチング現象を示した。密度汎関数法に基づいた電子状態計算の結果を踏まえ、欠陥内 酸素原子の結合様式の変化、すなわち酸化ジグザグ端周りのπ電子ネットワークのトポロジー変化に鋭敏に応答して局在π電子状態(エッジ状態)のスイッチングが起こることが分かった。このことにより、グラフェン端の幾何学構造だけでなく、その化学修飾状態に特徴的な電子状態の実験的な解明に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に導入したプローブ顕微鏡制御装置を用いることで、酸化(ジグザグ)グラフェン端の電子状態の原子分解能観察に成功した。また、密度汎関数法に基づいた電子状態計算を大規模計算機で行うことにより、酸化(ジグザグ)グラフェン端の構造同定に成功した。このことにより、グラフェン端の幾何学構造だけでなく、その化学修飾状態に特徴的な電子状態の実験的な解明に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
当初は1次元酸化によるグラフェン端の作製を念頭においていたが、前述のように酸化グラフェンを還元することで、酸素で修飾された面内欠陥構造(0次元酸化構造)を作製できることを新たに見出した。H24年度は効率的に実験が行えたため、研究計画を変更した。H24年度の未使用分は大規模計算機を用いた補足的な電子状態計算へ充てることとする。H25年度は、電子状態計算結果から酸化欠陥構造の局在π電子状態のスイッチング機能や磁気機能を解明し、その成果をとりまとめ学術誌に出版する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の微修正により生じた執行残高は、東京工業大学学術情報センターにおけるナノグラフェン物質電子状態の中規模計算経費および、研究成果発表への利用を計画している。
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