研究課題/領域番号 |
23750151
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小野 公輔 東京工業大学, 理工学研究科, 特任助教 (30579313)
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キーワード | 動的共有結合 |
研究概要 |
本年度は前年度に確立した主鎖の合成法をもとに用意したトリボロン酸とテトラオールからの[6×2]オリゴマーの構築をめざした。まず、ボロン酸エステル形成が容易に進行することが知られているメタノール中での構築を試みた。反応生成物と思われる沈殿を生じるものの、クロロホルム、DMF、トルエン等の通常の有機溶媒に不溶であった。沈殿物のIRスペクトル測定から、OHに由来するシグナルがほとんど観測されなかったこと、B-Oに由来するシグナルの確認からボロン酸エステル形成が進行していることを確認した。また、FAB-MS, MALDI-TOF-MS等の質量分析を行ったが、所望の分子イオンピークは観測することができなかった。そこで添加物存在下でのボロン酸エステル形成反応の検討を行った。ベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トルエン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピレンキノン、フラーレン、アダマンタン、アダマンタン誘導体等を試したが、いずれも結果は同様の不溶沈殿物を与えるのみであった。またほとんどの場合、沈殿物に添加物は含まれていないことがDMSOに溶解させたNMRスペクトル測定から分かった。続いてアルコール溶媒の炭素数を変化させて反応を行った。メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノールと試したが、有限構造体と思われるNMRチャートを得ることはできなかった。使用しているトリボロン酸、テトラオールは側鎖にメチル基を有している。ここに直鎖のアルキル基を導入することができる。そこで様々なアルキル鎖の長さの化合物を用意し現在詳細なボロン酸エステル形成を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、「動的共有結合を活用した相補的オリゴマー合成法の開発」である。24年度は、前年度に新規に確立した、主鎖の合成法をもとに用意したトリボロン酸とテトラオールからの[6×2]オリゴマーの構築を目指した。様々な条件下(種々のアルコール溶媒、添加剤、温度)によるボロン酸エステル形成を試みたが、多くの場合において不溶の沈殿物を得るのみで所望のオリゴマーの生成を確認するに至っていない。現在、側鎖にアルキル基を導入し、生成物の溶解性をあげる試みを行っている。以上のことから、研究課題達成にはしばらくの検討が必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、生成物の確認を溶液状態においてNMRスペクトル測定で行うべく、生成物の溶解性の向上を目指す。新規に確立した、主鎖の合成法では側鎖に容易にアルキル基を導入可能である。そこで長いアルキル基を導入することで、その改善をはかる。また、得られる生成物が混合物である可能性は高い。シリカゲルカラムによる精製が困難なことが予想されるため、その場合には、GPCを利用した精製を考えている。精製後には、質量分析や単結晶X線回折構造解析にる構造決定を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題は、「動的共有結合を活用した相補的オリゴマー合成法の開発」であり、前年度は少量スケールで実験を進めたため効率的に研究費を使用でき未使用額が発生した。次年度は、長鎖のアルキル基が導入された新しい主鎖の合成と、ボロン酸エステル形成を中心に研究を展開させる予定であり未使用額も次年度のために使用する。必要になる試薬や消耗品を中心に研究費を使用する予定である。
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