研究期間全体を通じて、「金属フリーアークプラズマ加熱法」と「金属フリー熱化学気相成長法」によって得られるナノカーボン構造体の生成条件の検討と構造解析、磁気特性評価を行った。 まず「金属フリーアークプラズマ加熱法」に関しては、研究実施計画にある金属フリー多層カーボンナノチューブ(CNT)の生成条件と磁気特性の検討を行う過程で新たに、グラファイトナノプレート(GNP)の高効率形成条件を見出した。この金属フリーかつ高純度GNPの磁気特性を評価したところ、約0.1kOeの保磁力を観測することができた。最終年度には詳細な生成条件の検討を行い、特に大気圧以上のCO2ガス中で放電を行うことでも、GNPが生成できることを見出した。各条件で得られたGNPの結晶性等をラマン分光ならびにX線回折によって解析した。さらに水素還元雰囲気で熱処理することで、GNPのグラファイト性が向上することを見出した。研究期間中に多層CNTやGNP構造と磁気特性との関連性を解明するまでには至らなかった。しかし本研究で得られたGNPは、特に高性能二次電池の金属不純物をまったく含まない負極材料して有望であると考えられる。そこで、GNPシートを作製したところ、約1S/cmの導電率を得ることができた。 一方「金属フリー熱化学気相成長法」で得られるカーボンナノファイバー(CNF)に関しては、不純物の有無をより明確にするため、X線光電子分光法による元素分析を行った。その結果、わずかに(約0.02%)硫黄がカーボンネットワークにドープされていることが明らかとなった。このCNFの構造と磁気特性との関連を、研究期間中に明確にすることはできなかった。それは生成量が極めて少ないためであり、最終年度には生成法の改良を行った。石英フロストガラス表面に従来の約30倍の高効率生成を可能にし、今後の分析評価へ展開できる結果を得ることができた。
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