研究課題/領域番号 |
23750155
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀毛 悟史 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70552652)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | イオン伝導 / 錯体 / 固体NMR |
研究概要 |
本研究の目的は、多孔性材料の「配位高分子」が有するミクロ空間を利用し、内部のプロトン伝導挙動を追跡し、制御することである。以下実績である。【1】配位高分子を系統的に合成し、その内部にプロトンキャリアとなりうる有機分子を充填し、プロトン伝導挙動を交流インピーダンス測定法によって評価した。細孔の表面積が大きい場合でも、細孔サイズが2nmを超えるもの、あるいはボトルネック型の細孔を有するものはプロトンキャリアを入れた後も伝導度は低い値にとどまった。これは細孔内部でキャリア分子が互いに集積し、運動性が大きく低下するためであることを固体NMRから解析した。これら知見から、アルミニウムイオンからなる1nmの細孔径を有する配位高分子に、ヒスタミンをキャリア分子として入れた時、高い伝導度が見られることを見出した。この複合体は150度で10-3 S/cmを超える伝導を示す。固体NMR、IR等の解析から、内部のヒスタミンは孤立はしているが、細孔に沿って密に並んでおり、高い運動性を有しており、これら特徴が高い伝導に寄与していると考えている。【2】幅広い温度の伝導には、200℃以上で安定かつ細孔が上記のように小さい構造のものが必要となる。そのような多孔性錯体の合成の指針として、構造内部に三次元的に無機骨格と有機分子が並ぶ構造を設計した。具体的にはバリウムイオン(Ba2+)とトリメシン酸の組み合わせに着目し、水熱合成によって新規配位高分子を合成した。得られた化合物はBa2+イオンによって三次元的に無機ネットワークが伸び、その間にトリメシン酸が架橋した珍しい結晶構造を有しており、空気中で350℃まで安定であることが確認された。この合成により、本錯体と【1】で示した伝導体設計の指針を合わせることによって200℃以上でも安定かつ高いプロトン伝導挙動を持つ配位高分子を合成できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な細孔構造を持つ多孔性錯体を合成し、また、様々なイオン伝導を担うキャリア分子と複合化することで、研究開始時と比べ、103以上の高いプロトン伝導度を有する複合体の合成に成功している。また伝導を示す化合物の構造を固体NMRやIRで直接観測する手法も確立してきており、合成・評価両面で順調に成果が得られているためである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは合成した伝導体はプロトン伝導に限られるため、今後はプロトンのみならず、リチウムやカルシウムなど、より大きなイオン、多価イオンをターゲットに入れ、配位高分子のイオン輸送機能の向上と評価を行う。また評価においては、これまでは粉末サンプルを主に対象としてきたが、配位高分子は単結晶で得られることが多いため、単結晶を用いたイオン伝導挙動の異方性なども解析していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、プロトンの伝導を直接観察するための固体NMR拡散測定を立ち上げる。そのための専用測定機器に研究費を使用する。また、伝導測定のためのインピーダンス測定装置においては、これまでの室温~100度付近の測定温度領域を更に広げ、高温における測定を可能とするための備品の購入に研究費をあてる予定である。
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