研究概要 |
本研究課題では、申請者が近年発見した配位高分子の表面誘起相転移現象 (Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 3914.) を応用し、相転移現象を電気的なシグナルとして読み込むことで、全く新規な機構で動作するラベルフリーセンサーを開発することを目指した。本研究では、室温付近で起こす相転移挙動に伴い、そのスピン構造を大きく変化させるSCO 配位高分子を利用する。SCOをセンサーデバイスへ応用した本研究課題は過去に全く例の無い試みであり、本申請では2年で以下に示す3つの課題の克服を目指した。 ・デバイス作製を志向したSCO配位高分子製膜法確立:比較的高温に温度ヒステリシスを持つSCO 配位高分子、[FeII(Htrz)2(trz)](BF4)2(1)をスピンコート法によって薄膜化した。さらに、配位子にアミノ基を導入した誘導体[FeII(Htrz)3-x(NH2-trz)x](ClO4)2 (2~5)についても同様の実験を行った。 ・デバイス化による表面誘起相転移検出方法の開発:本研究では、上記方法でSCO配位高分子を製膜し、その上にトップコンタクト型でミクロ電極を作製しデバイス化を行った。これにより、配位高分子の誘電率の変化からSCO挙動を検知するシステムを検討した ・スイッチング挙動を示すそのほか磁性材料の探索:本研究では、SCO挙動を示す錯体以外で外場により磁気特性を変化させる材料の探索を行った。実際の研究ではTb(III)ポルフィリンダブルデッカー型錯体を合成し、単分子磁石としての特性がプロトンの脱着によりスイッチングされることを見出した。
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