研究概要 |
ベンゼン-1,4-ジボロン酸と1,2,4,5-テトラヒドロキシベンゼンとの逐次的なボロン酸エステル結合の形成が,適切な自己組織化条件において,粒径が約900nmの単分散球状微粒子の生成を導くことを見出した。ボロン酸エステル結合の動的共有結合性は当該粒子に興味深い刺激応答性を与えた。すなわち溶液中のpH変化に応答したボロン酸エステルの開裂と再形成が,当該粒子の可逆的な溶解と再形成を導いた。さらに興味深いことに,当該粒子は特定の糖に応答して,球状から繊維状構造への形態変化を起こすことを明らかにした。この選択的な形態変化はボロン酸の糖認識能に基づく構成要素交換反応に起因することがわかった。本結果は分子組織化を利用した刺激応答性材料の作製において新たな方法論を提供するものであり,その成果を国際論文誌 (ChemPlusChem, 77, 201-209 (2012)) にて発表した。上記結果を受け,異なる分子部品を用いることで調製される粒子の構造的多様性を調査した。その結果,ベンゼン-1,4-ジボロン酸とペンタエリスリトールとの組み合わせが複雑な表面形状をもつ花弁状粒子の形成を導くことを見出した。当該粒子の機能開拓の一環として,表面への金ナノ粒子の担持を試み,その触媒活性を検討した。表面析出還元法により粒径が 2.7 ± 0.6 nm の金ナノクラスターが固定化された。当該複合体は4-ニトロスチレンの水素化反応において,金ナノクラスターと担体ホウ素との協働的触媒作用に起因する高選択的かつ高効率なニトロ基の還元が認められた。芳香族アミンは医薬・農薬や工業製品における有用な反応中間体であるため当該触媒は低環境負荷型触媒反応の実現に資するものである。本研究内容について,特許の申請(出願番号:2011-190242)を行った。
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