研究課題/領域番号 |
23750168
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
土屋 好司 東京理科大学, 理学部, 助教 (50398822)
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キーワード | ナノバブル / 超音波診断 / 分子認識 / 葉酸 / シクロアミロース修飾界面活性剤 / リン脂質 |
研究概要 |
本研究目的である超音波イメージング用分子標的ナノバブル造影剤を開発するためには、(1)気泡を微小化(ナノバブル化)し、(2)リガンド分子を気泡に標識する必要がある。平成23年度(研究1年目)において、新規界面活性剤であるシクロアミロース修飾界面活性剤(CA-LA)にアニオン性リン脂質(DPPS)およびPEG化リン脂質(DPPE-PEG)を混合することで、生体環境下においても微小かつ分散安定性の高いナノバブルを調製できるとの知見を得ている。そこで、平成24年度(研究2年目)は、腫瘍細胞に過剰発現する葉酸受容体をターゲットとし、リガンド分子として葉酸を標識した微小気泡の調製を試みた。 アミン末端PEG化リン脂質と葉酸をアミドカップリングさせることにより、葉酸標識PEG化リン脂質(FA-PEG-DPPE)を合成し、これをCA-LAおよびDPPSと混合させることにより葉酸標識微小気泡を調製した。その結果、微小気泡に葉酸を標識しても、生体環境下において微小かつ分散安定性の高いナノバブルが調製できることが分かった。 次に、葉酸標識バブルの集積性について、葉酸受容体陽性のヒト口腔癌(KB)細胞および陰性のヒト肺腺癌(A549)細胞を用いて比較検討した。まず、細胞毒性についてMTTアッセイにより検討したところ、分散剤濃度0.1μmol/Lまでは顕著な細胞毒性は示さないことが分かった。次に、FITCにより蛍光ラベルした葉酸標識ナノバブルを用いて、KB細胞およびA549細胞への集積性について、共焦点レーザー顕微鏡観察により評価したところ、葉酸受容体陽性のKB細胞には顕著な集積が認められたのに対し、葉酸受容体陰性のA549細胞にはほとんど集積しないことが分かった。以上より、本研究で調製した葉酸標識ナノバブルは葉酸受容体陽性の腫瘍細胞に対して高い集積性を有することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度(研究2年目)は、超音波イメージング用分子標的ナノバブル造影剤の開発に向けて、葉酸受容体が過剰発現している腫瘍細胞をターゲットとし、(1)リガンド分子として葉酸を標識した微小気泡を開発すること、および(2)得られた葉酸標識ナノバブルの葉酸受容体陽性腫瘍細胞への選択的な集積性を確認することを目的として研究を開始した。その結果、本研究で調製した葉酸標識ナノバブルは生体環境下においても分散安定性が高いことが示された。また、葉酸標識ナノバブルは葉酸受容体陰性細胞へはほとんど集積しなかったが、葉酸受容体陽性細胞へは高い集積性が認められた。以上より、現在までの目的はおおむね達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、葉酸標識ナノバブルは葉酸受容体陽性の腫瘍細胞に選択的に集積することが示された。しかし、これまでの成果は細胞培養用ディッシュレベルでの評価でしかなく、実用化に向けては実際の生体組織に近い系を用いての検討が必要である。そこで、研究協力者である東京慈恵会医科大学の大川教授および松浦准教授の研究グループが開発した、生体組織に比較的近い三次元肝癌細胞モデルを用いて、標識微小気泡の腫瘍組織への集積性を超音波診断および蛍光観察の両面から検討していく。また、腫瘍組織へのさらなる集積性の向上を目指して、大川教授の研究グループが開発した抗体などを標識したナノバブルを開発するとともに、腫瘍組織への特異的集積性について評価・検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬(リン脂質、界面活性剤、内包ガス、リガンド分子等)、細胞、培地、ガラス器具(合成、試薬調製用)、培養用ディッシュ等の消耗品が主要な研究費用途となる。特に次年度はリガンド分子標識(葉酸や抗体など)と腫瘍細胞への集積性について検討するため、リン脂質、蛍光蛋白質、抗体、細胞等の比較的高額な消耗品を購入する必要がある。 また、これまでの研究で、アクティブターゲティング能の高い葉酸標識ナノバブルの開発に成功したため、その研究成果について学会発表および学術論文への投稿を予定しており、学会発表に伴う旅費や論文投稿に必要な経費についても併せて計上させていただいた。
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